「TikTokはアーティスト発掘の役割」TikTok音楽担当者が語った、バイラルヒットする理由と、多様化する音楽的活用法

もし音楽業界の皆さんが、最近のTikTokでバイラルした楽曲に注目しているなら、イギリス人ラッパー、Millie Bの「Soph Aspin Send」の歌詞「M to the B」のTiktok動画を一度は見たことがあるかと思います。

「Soph Asipin Send」がバイラルヒットした理由は、レーベルのキャンペーンのおかげでも、新曲がプッシュされた訳ではありません。実際のところ、この曲がリリースされたのは2016年で、当時はイギリスのYouTubeで動画を配信して注目を集めていたティーンエージャーのグライムMCやラッパーたちの間で話題になりました。

楽曲がTikTokにアップロードされたのは今年6月で、TikTokインフルエンサーのBella Poarchが8月に口パク動画を投稿したことで拡散が始まり、TikTok発の世界的なバイラルヒットとして広がっていったのです。

TikTokを自然に活用する若手アーティストが増えている

Music Allyが9月21日からオンラインで無料開催した、音楽業界カンファレンス「Sandbox Summit Global」では、TikTokを音楽業界が活用するためのパネルセッションが行われました。

登壇したTikTok UKの音楽事業責任者のポール・ホーリカン（Paul Hourican）が、「Bella Poarchのフォロワーは200万以上増え、動画投稿数も現在では600万個以上投稿されています」と、バイラルヒットを起こした現象を説明しました。Bella Poarchが投稿した動画には、記事執筆時点で、いいね数が3600万回以上付いています。

ホーリカンはTikTokで成功したアーティストの事例を幾つも紹介しています。その中には、新人アーティストのヒットから、BTSやDua Lipa、デヴィッド・ゲッタとSIAのコラボなど、すでに知名度があるアーティストたちのヒットまで、様々な事例がすでにTikTok内では生まれています。

ホーリカンによれば、TikTokで今夏人気の曲トップ10は、イギリスだけで6月から8月のわずか2カ月の間に、動画視聴が65億回を超えたという、驚異的なTikTokの視聴データも明かしました。

TikTokを活動のプラットフォームとして活用するアーティストが増えていることも、トレンドとなっています。

イギリス人のインディペンデント・アーティストのキャット・バーンズ（Cat Burns）は64万人以上をフォロワーを抱え、スコットランド人シンガーソングライターのニーナ・ネスビット（Nina Nesbitt）は、楽曲制作の背景や心境を語る動画で人気を集めています。

ホーリカンがTikTokでヒットを生み出したアーティストとして高く評価したのは、2002年生まれのドイツ人インディペンデント・アーティストのゾーイ・ウィーズ（Zoe Wees）です。彼女は42万人近くのフォロワーを持ち、TikTokで音楽コンテンツを投稿し続けたことで、ストリーミングサービスでのリスナー獲得と再生に繋げています。

「ゾーイは、TikTok用にクリエイティブな動画を作成するだけでなく、多くの時間を費やしてファンのコメントに返信するなど、オーディエンスを理解しようとしています。彼女の行動力が、音楽での成功に反映し始めています」とホーリカンはゾーイ・ウィーズの成功を説明しました。

TikTokがA&Rプラットフォーム化する流れ

別のアーティストの成功事例では、シングル「Du Bist Mein」を新型コロナの感染が広がり始めた今年3月にリリースし、TikTokのバイラルヒットさせ、ドイツのシングルチャートで1位を獲得した、インディーラッパーLoredanaも紹介されました。「彼女はTikTokでの動画投稿だけに終わらず、TikTokに投稿されたUGCを使って、公式ミュージックビデオを作っています」。

「TikTokは、音楽業界がアーティストを発掘するA&Rとしての役割に注目が集まっています。そして、アーティストはTikTokを、自然な形で自分たちを表現できる新しい場として認識しています」

ノルウェー出身のインディペンデント・シンガーソングライターGirl In Redの事例では、彼女のファンが独自にTikTokで始めたプロモーションキャンペーン「Do you listen to Girl In Red?」で、自分たちの性アイデンティティをお互いで語るために使う楽曲として、Z世代のユーザーの間で話題になったかを紹介しました。

「TikTokユーザーの多くが、Girl In Redの音楽性を認知しています。そして、彼女の音楽をユーザー同士がリミックスするかのように、共通言語として活用することで、人気を呼んでいます」彼女の楽曲の人気は、TikTokに留まらずInstagramなどその他のプラットフォームにも広がっています。