IFPIによれば、中国の音楽市場は2020年に前年比33%増加するという急拡大を遂げました。こうした成長トレンドによって、中国は近年、世界的に成長が著しい市場の一つと認識されるようになり、世界の音楽業界は、いかにしてこの巨大市場を攻略するか、の議論や事業化が活発に行われています。
Music Allyでは中国市場に詳しい業界関係者から、2021年に起きたトレンドや、将来性について取材を行いました。
2020年は中国の音楽市場にとって分岐点となった年でした。その理由は、音楽サブスクリプションからの売上が、広告モデルの無料ストリーミングサービスの売上を初めて上回るほど成長したからでした。このトレンドは、音楽ストリーミングサービスやレーベル、権利者の音楽配信に対する方針を変えました。
「NetEase Cloud MusicやTencent Musicは、サブスクリプションを重要視しています。これは中国のローカルアーティストに限らず、海外アーティストの作品を配信する場合でも、カタログ楽曲を配信する場合でも、サブスクリプションサービスで配信するようになりました。特に、今まで無料で配信してきた楽曲やコンテンツもサブスクリプション内で展開するように変わりました。こうした方針の転換はプラスに左右しています。課金して音楽を聴く聴き方は、以前に比べ広がりました」こう説明するのは中国で音楽プロモーションを行うエージェンシー、Kanjian Musicのバイスプレジデント、Tink Georgievです。
レーベルは中国市場のさらなる成長に期待を寄せます。ソニーミュージックのグローバル・デジタルビジネス兼USセールス担当社長、デニス・クーカーは「人口14億人の国で、音楽を有料で利用する人はわずか一億人未満。プレミアムな音楽ストリーミングの利用者は大勢います。さらに大きく成長するチャンスがあります」と述べています。
Kanjian Musicのクリエイティブ担当Yutong Situは、中国市場が今後、音楽サブスクリプションの利用者数で3億人を超えると予想します。これは米国の音楽サブスクリプション利用者数に匹敵します。また、中国のサブスクリプションが普及すれば、楽曲の権利保有者への利益分配も改善されていきます。中国政府は、音楽ストリーミングサービスがレーベルと独占的にライセンス契約を結ぶことを禁止する規制を作り、不平等なビジネス環境を作らせないよう、目を光らせています。
中国やインドでレーベル向けに音楽マーケティングを行うOutdustryのアレックス・タガートは、「これまでの独占契約とアドバンス支払いは過去のものになります。中国の原盤ビジネスにレベニューシェア・モデルが初めて導入されたと言えます。中国の音楽が前向きな未来に向かい始めた証拠です」と、中国の音楽市場の変化をポジティブに捉えています。
Music Allyでは、中国市場のトレンド、レーベルの戦略、最新事情をまとめたレポートを先日公開しています。レポートはこちらからご覧頂けます。