イギリスのロックバンド、ミューズがリリースした6枚目のアルバム『Will of the People』は、来たるべきWeb3の世界に対する、アルバムの概念を覆す1枚になるかもしれません。
8月26日にワーナーレコードから全世界配信された同アルバムは、昨今のアルバム・リリースと同様、コレクション目的のファンをターゲットにした、アナログレコードやCDやカセットテープとグッズをバンドルしたデラックス・セットを多数用意して販売しています(勿論、単体でも購入は可能)。
同時に、ミューズが取り組んでいる新しい形式が、アルバムのNFTローンチです。そして、同アルバムのNFTはイギリスとオーストラリアでは、公式音楽チャートのアルバムチャートにカウントされるよう発行されています。
ミューズが発行するアルバムNFTは20ポンド(約3280円、1ポンド/164円)。1000個限定で世界中でローンチしました。
『Will of the People』は、環境負荷の削減に考慮したNFTマーケットプレイスのSerenadeで販売され、ソールドアウトになりました。NFT購入者は転売も可能です。転売価格の15%がアーティストと権利保有者に入ります。今アルバムは原盤管理がワーナーレコード、出版管理がユニバーサル ミュージック・パブリッシングとなっています。
同アルバムは、初登場でイギリスのアルバムチャート1位を獲得したことによって、これでイギリスで初めてチャート1位を獲得したNFTアルバム・ローンチになりました。『Will of the People』は、イギリスでは初めてアルバムチャート集計の対象となった単体アルバムのNFTローンチです。
ただし、アルバムチャート1位となった要因は、音楽ストリーミングの配信と、アナログレコード、CDなどのフィジカル商品の売上と、従来のアルバムローンチの展開によるもので、NFTプロジェクトは数ある商品フォーマットの一部です。
イギリスで最初にアルバムチャートにNFTプロジェクトが集計されたのは、今年4月、NFTアルバムボックス・セットとしてCirkayからローンチしたThe Amazonsの『How Will I Know If Heaven Will Find Me?』でした。
また、ヒップホップアーティストのAitchが8月19日にリリースした『Close to Home』では、アルバムNFTがLimewireから発行されており、こちらは初登場アルバムチャート2位を獲得して、初めてチャートインしたNFTプロジェクトを含むアルバムとなりました。
今後はミューズのように、チャート1位を獲得できるメジャーアーティストがNFTをアルバム時にローンチすること自体が珍しくなくなっていく可能性があります。
NFTの売上も集計するチャートのルールは、アーティストやレーベルがNFTプロジェクトをローンチする上でのモチベーションに繋がりやすく、話題を集めるPR効果も高いはずです。
ミューズやThe Amazons、Aitchなどの事例があるため、イギリスの音楽チャートを運営するOfficial Chartsは、NFTプロジェクトを含むアルバムをチャート集計に反映させることを躊躇していませんが、今後は、こうしたNFTプロジェクトの発行が増えれば、またルール変更が行われる可能性もあります。