Spotifyは、ライブビジネスとファンを繋ぐ取り組みの強化を図っています。Spotifyは8月10日からライブチケットを直接購入できるチケット先行販売機能のテストを始めます。チケット購入の実験はSpotifyアプリ、または「tickets.spotify.com」で公開されるアーティストのライブ情報から可能になります。
このチケット販売機能のテストは、アメリカで開始され、Annie DiRusso、Tokimonsta、Osees、Dirty Honey、Limbeck、Crows、Four Years Strongが最初のアーティストとして参加しています。販売分のチケットは、先行販売用のチケットから割り当てられます。
Spotifyはこのチケット先行販売機能がテストであると強調します。そして、チケットの先行販売に注力するとしています。同社のスポークスパーソンはMusic Allyの取材に対して、「Spotifyでは、ユーザー体験を向上させるため、日常的に新しい製品やアイデアをテストしています。より広範にユーザー体験の可能性を開くこともあれば、重要な学びとして機能することもあります。Tickets.spotify.comは最新のテストです。今後の予定については、現時点では未定です」と答えています。
音楽業界の関係者はすでに承知のはずですが、Spotifyはすでにチケット販売会社との連携を行っています。日本ではイープラスとの連携で、ライブ情報のオススメの表示や、チケット販売サイトへアーティストページから遷移させる連携があります。
海外では先日、Spotifyアプリ内に「Live Events Feed」がリニューアルされました。以前よりもコンサート情報を探しやすくしたもので、その中からユーザーはTicketmaster、AXS、Dice、Eventbrite、See Ticketsなどのチケット購入ページに飛ぶことができます。
Spotifyはこれまでもチケット先行販売に乗り出してきました。Spotifyが提供する「Fans First」機能を活用するアーティストは、熱心なファンやリスナーに特典やグッズ販売、限定情報を提供する中で、チケット先行販売へ誘導する場合があります。
しかし、いずれの場合も、Spotifyが直接チケットを販売するのではなく、パートナー企業のチケット販売サイトに誘導する仕組みでした。
今回のテストでは、Spotifyがチケット販売サイトへの誘導した場合と、直接販売と比較した場合との比較が考えられます。また、両方を同時に行うことで、Spotifyとアーティスト、そしてチケット販売会社との連携も強化でき、これによってSpotifyが受け取る手数料収入も増えることが予想されます。Spotifyは今回の取り組みにおけるビジネスモデルを含む詳細について明らかにしていません。
アーティストやマネージャーにとって、このSpotifyのチケット先行販売機能のテストがどのような可能性があるかを考えてみたいと思います。チケット先行販売は、現代のアーティストの大きな収入源となってきました。Spotifyが先行販売を後押し出来れば、プラットフォームを有効活用する「Spotify寄りな」アーティストを増やすことにも繋がる可能性があります。
悪質な転売業者や違法なダフ屋にチケットが購入される問題も改善出来るかもしれません。Spotifyのテストでは、転売や二次販売が禁止されています。
アーティストのファンや熱心なリスナーがチケット購入者か否か、Spotifyの過去の再生データから把握することも可能なはずです。アーティストやマネージャーは本当にチケットを購入してほしい人に販売するためのチケット戦略を向上させるデータが増えるかもしれません。現時点では、Spotifyのテストは、過剰な再生数を条件にチケット販売を特典にする、いわゆる「再生キャンペーン」のような販売方法とは異なります。
Spotifyのチケット先行販売は、アーティストのリスナーが多い都市や地域にターゲットすることも予想できます。
チケット販売に乗り出しているのは、Spotifyに限りません。TikTokは先日、Ticketmasterとの連携で、アプリ内からライブ情報を見つけ、チケットが購入できるアプリ内購入機能を新たにテストし始めました。
Snapchatを運営するSnapも、Ticketmasterとの連携で、Snapchatの位置情報機能「Snap Map」を活用したチケット情報と購入機能の提供を始めました。
YouTubeでもチケット購入サイトに遷移するライブ情報の掲示が動画内で可能です。YouTubeはTicketmasterに加えて、Eventbrite、AXS、SeeTickets、DICEなど、複数のパートナー会社から取得したライブ情報をチャンネルや動画再生中にPRできる仕様になっています。