ここ数年の間に加速したデジタル空間のメタバースに対する注目の高さとは裏腹に、実際のメタバース利用者の状況は低迷が続いており、今後に向けた課題が大きくなってきました。
メタバースプラットフォーム「ディセントラランド」(Decentraland)で3月28日から開催された「メタバース・ファッションウィーク2023(MVFW23)」は、ユニーク訪問者数が昨年の108,000人から26,000人と大幅に減少したことが発表されました。
4日間のイベント開催期間中、最も多かった同時参加者数でも、1,000人をわずかに超えただけでした。
メタバース・ファッションウィークには、アディダスやトミー・ヒルフィガー、ドルチェ&ガッバーナ、DKNY、COACHなど、世界的なブランドが参加。また、THE FABRICANTやDRESS Xといったデジタルファッションブランドも参加していました。
昨今のWeb3に対する高い注目を集める分野への関心は未だに高いままです。こうした動きの中で、メタバースの活用は、話題性や目新しさを呼ぶかもしれません。
しかし、ディセントラランドだけでなく、The SandboxやAlien Worlds、Axie Infinityといったメタバースやブロックチェーンゲームなどは、ピーク時と比べて利用者数が減少しています。
幅広いユーザーや、一般消費者を引き付けるほどの魅力を出せていないという課題を抱えているため、利用者の拡大と維持に失敗してきました。
メタバースに注力することを宣言してきた大手企業も、最近では方向転換を図っています。
社名を「メタ」に変更した前Facebookは、最近は「AI」へ社内のリソースを注ぐ戦略を打ち出しています。
ディズニーはメタバース部門を閉鎖。マイクロソフトもソーシャルVRプラットフォームや産業用メタバース事業部門の閉鎖を発表し、スタッフのレイオフを始めています。
今回のイベントでの参加者低迷が目立ちましたが、ファッションブランドは、メタバースやWeb3への投資を続けています。
最近ではグッチは、Bored Ape Yacht Clubやメタバース空間「Otherside」などの運営を行うYuga Labsとのプロジェクトを発表しました。両社はファッションとエンタテインメントの融合を模索しながら、NFTとメタバースを組み合わせた取り組みや、グッチの「Otherside」への参加などを計画しています。
ファッションブランドの狙いの一つは、若年層に絞ったアプローチのテストで、ゲームプラットフォームやWeb3サービスと組むことで、今までにない体験を提供しようと目論みます。
また、デジタルグッズの販売や、ゲーム感覚のコンテスト、体験型イベントから得られる参加者の行動データを、将来の事業に活用するマーケティング目的の狙いもあります。そのため、メタバースやWeb3への積極的な参加や企業同士の連携は、今後も続くことが予想されます。