デジタル・ライツ・ライセンシーのMerlinと、TikTokは、ライセンス契約更新が実現しないまま、期限が過ぎました。更新期限の10月31日を前に、TikTokは、厳選されたMerlin会員企業に対して、直接契約のオファーを出しています。インディペンデント・アーティスト向けのディストリビューターのUnitedMastersやDitto Musicは、Merlin経由ではなく、TikTokと直接契約する方針に切り替えました。
TikTokによれば、Merlinメンバー企業の大半と直接契約を結んだと述べています。また、直接契約を結ばない選択をした企業の楽曲をプラットフォームから配信停止にする準備を始めたとしています。TikTokは当初、Merlinメンバー企業に対して、直接契約の最終期限を10月25日と伝えていましたが、特定の企業に対しては、期限延長を提案していると言われています。
レーベルやディストリビューターの間では、直接契約を受け入れなければ、TikTokから楽曲配信が止まる懸念が広がる中、今後MerlinとTikTokとの契約は、どの様に変わっていくのでしょうか?
Billboardの取材に対して、MerlinメンバーでもあるPhoenix Music International (PMI)のCEO、ジョン・カーネル (John Carnell)は、MerlinとTikTokが、交渉を再開する可能性に期待すると述べています。カーネルは、PMIはTikTokと直接契約を結ばない決断を下したことも明らかにしました。
一方、別の企業の幹部は、直接契約を選んだことを明らかにしました (記事では、企業名と氏名は伏せられています)。契約に至った理由について「私たちのアーティストがTikTokを利用し続けたいと強く望んでいるのです。私たちは、新しい契約に合意せざるを得ませんでした。彼らにとって非常に重要なことでした」と述べています。
TikTokが提示する直接契約の条件も明らかになり始めています。大きな違いは、アーティストへの収益分配の計算方法が変わることです。新しい契約条件では、楽曲を使用した動画の「視聴回数」に基づいて、TikTokが市場シェアを計算し、その中から、楽曲のライセンス元へ収益分配を分割で支払うこととなります。現在の条件は、楽曲が使われた「動画生成」の回数に基づいて計算されていました。分配額は、視聴1回に対して、一律の金額が設定されているわけではなく、また一定額が支払われるわけでもありません。TikTokの契約期間は、特例を除いて、通常2年間で、今年10月に合意した新しい契約は2026年後半に期限が切れる予定です。
しかし、Billboardに対して、ある企業の幹部は「TikTokは常に十分な収益分配を支払ってきませんでした。短期的には財政的な問題は発生しません。彼らは世界最大級のSNS企業ですが、音楽企業にとっては、最も小さい収入源です」と分配額の懸念を示しています。