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11月7日、ロンドンで開催されたビジネス・カンファレンス「TellyCast Digital Content」で、Metaの北ヨーロッパ地域エンタテインメント・パートナーシップ責任者のダン・ビドル (Dan Biddle)が基調講演を行いました。

ビドルは、Instagramのアルゴリズムの特性を活かしたマーケティングや、効果を最大化するために活用すべき機能について語りました。

同カンファレンスは、デジタルコンテンツ業界の企業関係者に向けた内容でしたが、彼の講演は、SNSの効果を高めたい、レコード会社やアーティスト、マネジャーにも当てはまります。

以下は、Music Allyがセッションに参加して感じた、重要な10のポイントのまとめです

Meta 北ヨーロッパ地域エンタテインメント・パートナーシップ責任者 ダン・ビドル

1. Instagramリールの「関連性」

ビドルは、Instagramが提供する機能を、典型的なマーケティングファネルとして活用すべき、と語りました。ファネル上部ではオーディエンスへのリーチと認知拡大を促進させ、下部でコンバージョンとロイヤリティ向上を目指すという基本的な考え方です。その中で、Instagramリールとショート動画は、ファネル最上部に最適な機能です。

「Instagramリールは、可能な限り、最大のオーディエンスにリーチする手段です。リールを使って新しいオーディエンスにリーチしています。勿論フォロワーにもリーチしますが、理想的には、私が作成したコンテンツは、Instagramとアルゴリズムが見つけた、多くの人、より広域なオーディエンスにリーチでき、そしてファネルの下部でコンバージョンできるコンテンツです」

ビドルは、Instagramリールで重要な要素として、3つの「R」である「関連性 (Relevance)、「共感性 (Relatability)」「継続的な関係維持 (Retention)」を挙げました。「関連性」について、トレンドや話題性に繋がるテーマ設定の重要性を説明しました。

「皆さんの投稿は、トレンドを掴んでいますか?今の雰囲気に合っていますか?人々が検索したり、話題にしているでしょうか?」

「InstagramやFacebookで話題や注目、コメントを集めるトピックでしょうか?もしそれらに関連するコンテンツを作成するなら、アルゴリズムはその会話の視聴者を探してくれるでしょう」

2. Instagramリールの「共感性」

ビドルは、Metaのサービスで毎日35億回以上、InstagramリールがDMで共有されている点に注目しました。多くの場合、こうした動画共有の背景には、「私たちに似ている」という共感させる投稿が起点になっています。

「何をすれば、できるだけ多くの人が共有したい、と思わせる共感性を得られるでしょうか?通常よりも短い投稿など、短いフォーマットを考えるべきかもしれません」

「動画投稿の最適な尺をテストすることは重要ですが、共感性が高い投稿であれば、短尺の動画の方が共有されやすく、説明無しでも共有されます」

3. Instagramリールの「関係維持」

ビドルは3つ目の「R」である関係維持(リテンション)の重要性について説明しました「視聴者は最後まで動画を視聴したでしょうか? あらゆるアルゴリズムは、動画が視聴者を維持したその内容を測定しています」

「Instagramリールの場合、ループ再生したか?2回、3回見たか?これが重要です。最後まで見てもらい、複数回リピート視聴してもらうことが、非常に重要な兆候です。例えば、お笑いの番組のクリップがある場合、1つの大きな動画ではなく、3つのリールに分割した投稿を検討してみてください」と助言しました。

4. Instagramリールにはエンド画面を付けない

エンド画面 (エンドカード)は、動画の最後に表示される画面で、ブランドやクリエイターのロゴ、関連情報を表示します。エンド画面は動画投稿でよく使われる戦略の一つですが、ビドルは、リールでは使わないよう警告しました。

「エンドボードは付けないでください。放送業界やブランドの担当者の中には、必ず入れたがる人がいます。ですが、これは視聴者に『動画が終わった。次の動画にスワイプしよう』と認識させてしまうからです」

「極力避けてください。視聴者にスワイプする理由を与えないようにしてください。エンドボードの代わりに、キャプションやその他のツール、ステッカーなどを利用してください」

5. カルーセル投稿を軽視しない

カルーセル投稿は、1回の投稿で写真や動画を複数投稿できる形式です。今年3月、投稿できる数が10枚から15枚に拡張され、8月には20枚まで投稿可能になりました。

「カルーセル投稿の威力を理解していないため、軽視している人は少なくないと思います。皆さんの戦略は何でしょうか? 目標はリーチを広げることですか?オーディエンスの獲得ですか?カルーセル投稿は、戦略の一部であるべきです。より多くの人にリーチする手段となります」

ビドルは、1回の投稿で20フレームを使い、順序立てて物語形式に投稿するナラティブを強調しました。「もし視聴者がカルーセル投稿で最初の写真を見て『いいね』をクリックし、スワイプし続けた場合、次にその視聴者がInstagramを開いた時、2枚目や3枚目の写真が表示される可能性が高まります。つまり、注目を得られる機会が増えるのです」

6. カルーセル投稿にはエンド画面と音楽を追加

Instagramの投稿では、リールと異なり、カルーセル投稿でエンド画面が適しているとビドルは語りました「リールにエンド画面を使わない場合でも、カルーセル投稿には付ける事ができます。写真や動画を連続的に見せる流れの最後の画像として自由に活用できます」

「チケット販売、グッズ販売、クリックスルーなど、エンド画面の用途は様々です。どんなに素晴らしいコンテンツであれ、人々は最後にはスワイプして離脱します。それが行動です。人々がスワイプしてしまうことを恐れる必要はありません。ペナルティを受けることはありません」

さらに、音楽を追加することで、カルーセル投稿には別の利点も生まれるとビドルは説明しました。

「音楽を追加すると、カルーセル投稿が、リールと一緒に表示できます。つまり、カルーセル投稿で、フィードだけでなく、リールにも表示されるため、より多くの人に届けることができます」

7. カルーセル投稿や画像投稿をThreadsに同時投稿

カルーセル投稿や1枚の写真を投稿する際、Xの競合アプリであるThreadsにも同時投稿することをビドルは勧めています。Threadsは急激に成長しているSNSで、月間アクティブユーザー数は2億7500万人を超えました

「手間をかけず、InstagramからThreadsに同じコンテンツを迅速に簡単に投稿できます。1日5分ほど費やせば、オーディエンスとリーチを拡大することができます」

「Threadsでは、リーチが全てです。最初にアカウントを開設し、InstagramからThreadsにいるフォロワーが自動的に集まる中、コンテンツを新しいオーディエンスに届けるアルゴリズムのリーチが非常に強力です。

「私が見たところ、30%から80%の人のThreads投稿は、まだフォローしていない人や、新しいオーディエンスにリーチしていると見ています。信じられないほど強力なことです」

8. Instagramストーリーズはリーチ目的には最適ではない

多くの人にとって、特にアーティストにとって、ストーリー投稿は、重要なSNS戦略の一部です。ただ、ビドルは、リーチの最大化を目的にした場合、他の投稿形式に注力すべきと提案します。

「ストーリーズはフォロワーのみに配信されます。他の人にはレコメンデーションされません。それも、皆さんのフォロワーの全員ではなく、最もエンゲージメントが高い一部の人のみに配信されています。

リーチが目的なら、ストーリーズは最も効果的な活用方法ではないかもしれません。「定期的に活用するなら有益でしょう。常に使い続ける必要はありません。バーティカル・コンテンツ戦略に取り組んでいるチームなら、ストーリーズではなく、カルーセルやリールの投稿に取り組む方が良いでしょう」

また、ビドルは、1つか2つのストーリーズを同時に投稿する方が、以前は人気があったストーリーズの連続投稿よりも、良い戦略だと述べました「連続投稿は、エンゲージメントを生み出します。しかし、それはカルーセルで狙うべきです。もし連続して見てもらえるようなコンテンツを制作しているのであれば、カルーセル投稿を使うべきです。特に、投稿の目的が、リーチであり、エンゲージメントを狙うなら、なおさらです」

「一ヶ月間に投稿されたストーリーズの数が、カルーセルやリールの5倍、10倍あったクリエイターやメディア企業を何度も見てきました。しかし、リールやカルーセルで獲得しているエンゲージメントとリーチは、10倍から100倍です。より多くのオーディエンスにリーチするコンテンツの制作に時間を費やす方が良いかもしれません」

9. ライブ配信で「その場にいれば良かった」の瞬間を醸成

ビドルは、ライブ配信が、ストーリーズと同様、フォロワーにしか配信されないため、新しいオーディエンスやより多くの人へのリーチを獲得することよりも、フォロワーのロイヤリティを深めることを目的とした機能であることを指摘します。

一方、ライブ配信は既存のコミュニティに対して非常に有効的な手段です。特にコラボ配信機能を使いゲストを参加させることで、その効果が拡大できます。

「ミュージシャンの場合、コラボレーションしたアーティストや、プロデューサー、リミキサー、気心の知れたインフルエンサーなどを参加させることができます。オーディエンスは少なくなりますが、エンゲージの高い非常に熱心なオーディエンスが集まるはずです。ロイヤリティを高め、コンバージョンに繋がるオーディエンスです」

10. ブロードキャスト・チャンネルでスーパーファンを獲得

Instagramのファネルの一番下には、既にエンゲージしているコミュニティ向きな発信機能の「ブロードキャストチャンネル」 (一斉配信チャンネル)があります

2023年に導入された同機能は、フォロワーのDMに1対多のメッセージを発信し、直接交流ができます。

これは、昨今の音楽業界で議論されている「スーパーファン」の観点では、とてつもなく有益な機能です。リールで多くの人から注目を集められたなら、この機能を使った可能性も広がるでしょう。経済的に支えてくれるフォロワーに変えられるかも知れません。

ビドルはこの機能の利点を次のように説明しました「もし、フォロワーからのコンバージョン率が5%程度であれば、ブロードキャスト・チャンネルでは10,000人、20,000人が集められるでしょう。皆さんのメッセージをDMで受け取る人たちです。ブロードキャスト・チャンネルに投稿すれば、アルゴリズムは多くの人へのリーチを妨げません」

「これはスーパーファンです。あなたがチケット情報を投稿すれば、チケットを購入するでしょう。Tシャツを買うでしょう。リンクをクリックするはずです」

以上がビドルが指摘した、Instagram攻略の10の要点です。