
世界各国のインディペンデント音楽出版社が参加する業界団体、Independent Music Publishers International Forum(IMPF)は、2023年における世界の音楽出版市場に関する最新のレポートを公開しました。IMPFによれば、インディペンデント音楽出版市場の収益は2022年から5.7%増加して2023年は25.7億ユーロに拡大しました。成長の要因は、世界各地における著作権管理団体 (CMO)による著作権徴収が7.6%増加し、徴収額が117億ユーロに達しました。特にデジタル収益の世界各地での急成長が顕著で、著作権徴収も増加しています。
一方、メジャー音楽出版社を含めたグローバル音楽出版市場におけるインディペンデントの市場シェアは2022年の26.7%から2023年には26.3%と減少しました。インディペンデントのシェア減少は、これで3年連続です。減少の要因は、著作権市場における統合が影響しました。
メジャー音楽出版社の市場シェアは2022年の60.1%から60.6%へ増加。1位はソニーミュージック・パブリッシングで24.9%のシェアを占め、2位のユニバーサル ミュージック パブリッシングの23.3%を上回りました。
IMPFは、CMOや実演権管理団体 (PRO)が参加する国際業界団体「CISAC」のデータを基に、地域別の出版収益に関するデータも明らかにしています。
アジア太平洋地域: 唯一のマイナス成長で前年比0.3%減少。収益は17億8000万ユーロ。減少の要因は、日本と韓国における為替の影響によるもので、アジア地域の活動が減少しているわけではありません。
ラテンアメリカ: 最も高い成長率で26.2%増加。ただし市場規模は未だに小さく、収益は6億9000万ユーロ。そのうち、9000万ユーロがインディペンデント音楽出版社による収益でした。
北米: 成長率は7.9%増加。収益は31億9000万ユーロ。4億2000万ユーロがインディペンデント音楽出版社によるものでした。
ヨーロッパ: 成長率は8.3%増加。収益は60億ユーロ。7億9000万ユーロがインディペンデント音楽出版社によるものでした。
インディペンデント音楽出版社の収益は、2020年以降 (IMPFが市場データを集計し始めた年)、年々成長が続いています。2018年には11.5億ユーロだった市場規模は2023年には25.7億ユーロまで拡大しました。これは105.6%という驚異的な成長に相当します。
収益増加の一方、インディペンデント音楽出版社も、統合や企業買収などによる業界再編の影響を受けています。市場規模や収益は拡大しているものの、市場シェアが縮小していることが、業界の動きを示しています。例えば、これまでインディペンデント音楽出版で管理されていた著作権が、メジャーの音楽出版社や、BMGやKobaltといった大手企業に買収される動きが目立っています。
また、楽曲カタログの資産価値を向上させるため、積極的に取引・運用する企業も増えてきました。著作権ビジネスや音楽出版ビジネスは投資家にとって魅力的な領域となっています。将来的には、さらに多くのインディペンデント音楽出版社や楽曲カタログ著作権が、メジャーや投資グループによって買収される可能性もあります。インディペンデント企業の影響力の低下は、グローバルやローカルにおける音楽エコシステムにおける多様性の低下を招き、独立した活動を維持したいクリエイターや作詞作曲家、音楽企業の選択肢を狭める懸念が指摘されています。