COVID-19によるロックダウンや外出自粛の影響を受け、ライブ配信に注目が集まっている。ライブ配信プラットフォームとしては、フェイスブックやインスタグラム、YouTube、Twitchなどの大手テクノロジー企業が提供するサービスがあるが、現在、日本を含め、世界中で新規ライブ配信サービスが次々にローンチされている。

日本では、電子チケットプラットフォームのZAIKOがいち早く有料ライブ配信サービスを展開し、話題を呼んだが、その他のサービスも続々生まれている。

日本のチケット販売サイトもライブ配信サービスに進出し始めている。ぴあは、COVID-19で影響を受けたエンタテインメントを再始動するための取り組み [re:START] の一環として、動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」をローンチした。会場手配、配信機材、配信スタッフ、プロモーション、視聴券販売、配信までをぴあが一括サポートするという。

他にもぴあは、自宅からチケットを通して支援活動を行う企画「エンタメサポーターチケット」を開始している。この取り組みでは、ユーザーがオリジナルの画像・メッセージをアーティストや団体に送信可能な電子チケットを500円、1,000円、3,000円の支援金額から選択購入することにより、応援したい団体・アーティストの今後の活動を支援できるとのこと。

イープラスも有料視聴チケット制のライブ・ストリーミング・サービス「Streaming+」を5月15日よりプレオープンする。チケットはイープラスを通じて購入し、Vimeoを介した動画配信をイープラスのサイト上で視聴できる仕組みだ。イープラスが運営するオフィシャル・グッズ販売サイト「e+ SHOP」に委託したグッズを視聴ページで紹介することも可能だという。

グランド・オープンは5月30日からとなっており、視聴チケット1枚で同時に視聴できる端末数を制限することにより、実際の興行に近い形を実現する。また、7月より順次、「AWS Elemental MediaLive」をベースとした独自の配信サービスを開始し、マルチ・ロケーションの配信やスマートフォンなどを使用した簡易配信アプリの提供、投げ銭、ライブ・コマース、海外向けインバウンド販売も実装予定とのこと。

販売手数料は視聴チケット売上の8%~15%、6月30日まではキャンペーンで一律3.9%で提供するという。また、ハイエンド向けの提携サービス年て、「Streaming+」とは別に、業界最高音質レベル、強固なデジタル著作権管理に対応した有料ライブ・ストリーミングサービス「MUSIC/SLASH」の有料視聴チケットの販売も開始するという。「MUSIC/SLASH」のサービス開始は6月26日を予定している。

ライブイベント掲載数No.1のオンライン・チケット直販サービスのTIGETも、有料ライブ配信サービス「TIGET LIVE」を4月28日から正式提供している。COVID-19の影響を受けて苦境に立たされているアーティストおよびライブハウスを支援するため、2020年5月31日まで、TIGET LIVE 利用料を無料とするキャンペーンも開催中だ。

TIGETで販売する電子チケットと連携し、購入者だけがライブ配信を視聴可能になる。実際のライブイベント同様、開場時間になるとライブ配信ページへ入場可能となり、開演時間になるとライブ配信が開始されるという。

4月26日にはこけら落としとして、3人組アイドルユニット「sora tob sakana」の定期公演を無観客・有料ライブ配信で実施し、ライブハウスの収容人数の2倍を上回るチケット販売枚数を記録し、チャットには延べ千件を超える投稿がされるなど、大盛況となったとのこと。

海外でも、「Release Party」、米スタートアップのYoopによる「eSpace」、Pandoraの創設者であり元CEOでもあるティム・ウェスターグレン氏による新企業Next Musicが開発した「Sessions」など、様々なサービスが新しくスタートしている。

同様に、インスタグラムやフェイスブックなどの大手サービスも、収益化機能の実装を中心に改善の動きを見せている。

フェイスブックはリーチ力という観点で、非常に強力なライブ配信プラットフォームだ。そのために、世界中で多くのアーティストがCOVID-19によるロックダウン期間中に、演奏やファンとのQ&Aなどのライブ配信を行うためにフェイスブックを利用している。リーチ力を求めてフェイスブックを利用しているアーティストが多いため、これまで、フェイスブックにおけるライブ配信から直接収益をあげることは、あまり目的となっていなかった。

最近フェイスブックは、自社サイトに「離れている時にもっと繋がる方法」という内容の記事を発表している。「フェイスブックにおけるイベントをオンラインのみの開催に設定することが可能になり、今後数週間以内にFacebook Liveを統合して、ゲストに配信できるようになります。クリエイターや中小企業をサポートするため、ライブ配信付きのフェイスブック・イベントに有料アクセス機能を追加する予定です。オンラインにおけるパフォーマンスから、レッスン、専門的なカンファレンスまで、あらゆるコンテンツに対応します。」

フェイスブックにおいて、有料でライブ配信する機能は、アーティストにとって大きな意味があると言えるだろう。ただ、オプションが実装された時に、どれくらいのファンが実際に支払いをするかという有用なデータはまだ存在しないため、そこに関しては注意が必要だ。また、フェイスブックのライブ配信を収益化する方法は、アクセスを有料化するだけにとどまらない。フェイスブックは最近、投げ銭システム「スター」およびミュージシャンへの寄付システムを拡大することを発表している。これにより、誰もが無料で視聴可能でありながら、オーディエンスの一部がお金を支払う形のライブ配信がサポートされる。

大手サービスでは、インスタグラムも同様に収益化への道を探っている。物理的なロックダウン、および外出自粛措置が今後数週間のうちに、世界の様々な場所で緩和され始めたとしても、物理的な音楽ライブをいつ再開できるかは目処が立っていない。そのため、より多くのアーティストがライブ配信を収入源にする道を探らざるを得ない現状だ。

有料のライブ配信(投げ銭などでサポートされる無料配信を含む)に真剣に取り組むアーティストやチームは、物理的にツアーを再開できるようになっても、ライブ配信をビジネスの一環として有効活用する道を見つけられる可能性も多いにあるだろう。適切なスケールで様々なプラットフォームを活かすオプションが多ければ多いほど、良い結果をもたらすことは間違いない。