2021年にメジャーレーベルのアーティストがプロモーションを展開するならば、複数のグローバル・ストリーミングサービスと連携する方法が必要不可欠となっており、加えてリリース・キャンペーンにサービスを世界規模で巻き込むケースが増えているため、自社のマーケティング予算だけでなく、サービス側のマーケティング予算も活用する必要があります。
イギリスのロックバンド、コールドプレイが10月15日にリリースする9枚目のアルバム『Music Of The Spheres / ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』のキャンペーンを事例に見てみます。リリースに併せて先日、コールドプレイはAmazon Musicと共同でポップアップ・インスタレーション・イベント「The Atmospheres」を東京、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンの4都市で開催することを発表しました。
これは新アルバムの「The Spheres」の世界観を演出した専用の360度オーディオビジュアルや、Dolby Atmosでミックスされたシングル『People of the Pride」など没入体験型のインスタレーションが楽しめる予約制イベントで、東京では表参道ヒルズで開催します。
Amazon Musicはまた、10月22日にシアトルのクライメット・プレッジ・アリーナでの初ライブとして登場するコールドプレイのライブを配信します。クライメット・プレッジ・アリーナは世界で初めて地球温暖化や環境破壊を減らすためエネルギーの自給を行うゼロ・カーボン化されたアリーナで、ライブやツアーで生じる環境破壊を減らそうと取り組んでいるバンドにとって最適な場所と言えます。
Spotifyとは、歌詞を使った暗号形式のティザー体験を制作しています。
バンドはハッシュタグ「#SpotTheSpheres」を付けた動画コンテンツをSNSで投稿していますが、その中に位置情報と日付が個別に記され、ファンは暗号メッセージを解読すると、ロンドン市内に設置されたデジタルビルボードを特定できます。ビルボードにはアルバム収録曲の「Butyful」の歌詞が明らかにされる動画が再生されており、一足早くファンは謎解きをしながら新曲情報をSNSに投稿してアルバム解禁への期待を高めていきます。
同じように、フォーカストラック「My Universe」のSpotifyキャンバスにも位置情報メッセージが表示される投稿を行っています。毎回バンドの情報公開を追いかけたいファンは、何度も楽曲を再生することとなります。また屋外ビルボードに表示されるSpotifyコードをスキャンすると「Music of the Spheres」プレイリストに誘導されていきます。今後、他の楽曲の歌詞を掲載したビルボードが世界各地に設置される予定とのことです。
暗号メッセージの投稿は昨今、アーティストの間で人気のSNS施策の一つですが、SpotifyキャンバスやSpotifyコードなど、Spotify独自の機能を連携させた展開を加えることで作品の楽しみ方がアップデートされます。SNSとストリーミングとで同時にアルバムローンチを楽しめるファン体験をどれだけ創出できるかで、新作に対するエンゲージメントが広がっていきます。
コールドプレイのアルバムローンチと世界ツアーの発表に併せて、ニューヨーク市ではiHeartRadioのアルバムプロモーションの一貫で、エンパイアステートビルがシングル「My Universe」の楽曲にシンクロして光る、オリジナルのライトアップショーを行いました。
このエンパイアステートビルのライトアップは、ニューヨークのラジオ局「New York Z100」のDJがリアルタイムで流すコールドプレイの「My Universe」とシンクロして光ります。iHeartRadioのアプリでも同時配信が行われました。