調査会社のeMarketerが「2019年、アメリカにおけるSpotifyのリスナー数がPandoraのリスナーを予想よりも早く上回った」という見出しの記事を発表した。eMarketerは昨年、2021年までに米国で、SpotifyがPandoraを追い抜くという予想を発表していたため、その予想を上回った形だ。Spotifyの米リスナー数は2018年の5,200万人から、2019年には6,540万人に増加し、反対に、Pandoraのリスナー数は同期間で、6,860万人から6,310万人に減少し、すでにSpotifyがPandoraを上回ったとeMarketerは推定している。

これは、SpotifyとPandoraそれぞれの財務報告から考えれば、驚くことではない。Spotifyの2019年末時点における、北米の月間アクティブ・ユーザー数は7,320万人であり、eMarketerの米国のみの数値が正しい場合、Spotifyはカナダにおいて、約780万人のリスナーがいたことになる。アメリカとカナダの人口比を考えると、妥当と言えるだろう。一方、Pandoraの親会社であるSiriusXMの最新財務報告によると、Pandoraの2019年末時点の月間アクティブ・ユーザー数は、2018年末の6,940万人より少ない、6,350万人となったという。

eMarketerのレポートはさらなる推定を提供している。eMarketerは、Spotifyが今年、アメリカで1,050万人のリスナーを新規に取り込み、7,590万人に到達させ、2023年末までに、9,340万人のアメリカ人がSpotifyを使用するようになると見込んでいる。一方、Pandoraについては、2020年末までに6,080万人、2023年末までに5,780万人と、減少傾向が続くという推定だ。しかし、SiriusXMによる、Pandoraのリスナー成長を回復させる計画はまだ本格的にスタートしていないため、この推定が覆る可能性もあり、調査会社がその結果を結論づけるにはまだ早いと言えるだろう。

興味深いことに、eMarketerは、米国におけるアップルとアマゾンの音楽ストリーミング・オーディエンスの推定値も発表している。Amazon Musicは3,870万人、Apple Musicは3,370万人だ。この推定は、いくつかの疑問(例えば、米国はAmazon Musicの世界的なユーザー数である5,500万人のうち、70%も本当に占めているのか?など)を提起させるが、同時に、非常に大きなニュースとなる可能性も秘めている。アマゾンが、アメリカにおける最大の有料音楽サービスとなっているかもしれないということだ。

Spotifyの財務報告によれば、北米は、2019年末時点の世界中の加入者の30%(約3,720万人)を占めたという。合計リスナー数と同じように、アメリカとカナダの人口比がここでも適用される場合(約9:1)、米Spotify有料加入者数は約3,350万人いることになる。eMarketerは、有料プランのみ展開しているApple Musicのリスナー数が3,370万人、Amazon Musicのリスナー数が3,870万人と予測している。

もちろん、注意すべきは、Amazon Musicには、リスナー数が明らかとなっていない、無料プランがあることだろう。また、Apple Musicには、eMarketerの推定地に含まれているかどうか定かではない、無料お試しユーザーがいる。ファミリー・プランやプライム会員プランの存在によって、計算はさらに複雑になる。しかし、Spotify、Apple Music、Amazon Musicの米国における有料リスナー数が接戦となっており、アマゾンが一歩先を行く可能性は突拍子もない推測とも言えない。今後に注目だ。

ちなみに、日本では、2018年末時点で、音楽ストリーミング・サービスを使用している人は1,980万人いるとICT Research & Counslutingは推定している。そのうち、1,010万人は有料でサービスに加入しており、970万人は無料お試し版を使用しているとのこと。さらに、ICT Research & Consultingは、2019年末までに有料サービス加入者数は1,140万人、無料お試し版ユーザーは1,020万人まで増加し、合わせて2,370万人になると予測している。また、ICT Research & Consultingによると、日本で最も人気となっているサービスは順に、Amazon Prime Music、Apple Music、LINE MUSIC、Spotifyだという。