最近の様々な報告によると、COVID-19感染拡大防止のためのロックダウンが世界的に行われた最初の数週間で、音楽ストリーミング再生数は減少したという。音楽業界はこの事実を心配すべきだろうか?ユニバーサル・ミュージック・グループのデジタル戦略EVPであるマイケル・ナッシュ氏はこうした不安を和らげる発言をしている。

「収益の大きな牽引役であるサブスクリプション・ビジネスは、その仕組みにより、比較的安定しています。消費者と定期的な請求関係を築いているため、消費が多少減少しても、アーティストとレーベル間で分割される収益はある程度一定に保たれます」とナッシュ氏は説明している。ナッシュ氏は、ジョージア大学テリー・カレッジ・オブ・ビジネスの音楽ビジネス・プログラムが主催するアーティスト権利シンポジウムIIの一環のオンライン・パネルで講演を行なっていた。

彼は広告サポート型のストリーミングに関しては、ブランドが消費を一時停止していることにより打撃を受ける可能性があることを認めているが、サブスクリプション型の音楽収益はかなり安定した状態に保てるだろうと述べた。

「幸いにも、我々は、サブスクリプションをベースとした録音原盤収益にほとんど移行済みです。サブスクリプション・モデルの性質上、我々は高い復元力を有しているのです」とナッシュ氏は語る。

音楽への危険は、景気が悪くなり、家計費を削減する中で、すでに音楽サブスクリプション・サービスに加入している人々が、サブスクリプションをキャンセルし、無料サービスに戻ってしまうケースが増えた場合に出現するだろう。

「有料から無料へと戻る動きに関して、差し迫った懸念は見られません。しかし、時間とともにそれが変化する可能性はあります」とナッシュ氏は認めている。しかし、同時にナッシュ氏はそのような解約への動きは回避できるだろうとして、楽観的な見方を示した。

「自分の判断で使用できる支出という観点で、代替案が失われているのです。人々はスポーツ・イベントには行けません。高級レストランで素敵な食事をすることもできません。したがって、音楽サブスクリプション、および、すべてのサブスクリプションにおける登録者が急増しているという事実は、経済における様々なバランスの観点で、何が起きているのかを物語っているとも言えるでしょう。」

「繰り返しになりますが、音楽がサブスクリプション・モデル中心へと大幅に変化したという事実は、今後の安定の源となるでしょう。」と語るナッシュ氏は、COVID-19の危機により、アーティストが生き残り、繁栄するために、レーベルが音楽業界の他の分野、例えばライブ分野で、より大きな役割を果たす可能性があることも示唆している。

「アーティストの健康と繁栄が、我々のすべての活動の中心という現実があるため、より広いエコシステムで起きていることも、我々には関係しているのです」とナッシュ氏は述べる。「ツアー・エコノミーに関係がなくても、ツアー・エコノミーについて、考える必要があるのです。我々はLive Nationではありません。しかし、我々は、アーティスト・キャリアの持続可能性、出現するすべての選択肢、および、赤字にどう対処すべきか、といったことを考える必要があるのです。」

ナッシュ氏はさらに、「本当の問題、そして課題は、アーティストの健康および繁栄、そして、クリエイティブ・コミュニティをどう存続させるか、ということにあるのです」と語る。「従って、レーベルは、音楽エコスシテムの安全圏を超えて手を差し伸べる必要があり、他のいくつかの分野でも、アーティストの繁栄を守るために、より積極的に参加する役割を果たす必要があると私は考えています。」