TikTokでは既に、スキルを披露することでオーディエンスを築き、それをレーベルとの契約に活用する、才能を持った若いミュージシャンの数が増えている。TikTokは、その代替案として、ディストリビューターのUnitedMastersと新しくパートナーシップを組み、「TikTokユーザーが音楽を、他の音楽ストリーミング・プラットフォームに直接配信する」ことを可能にした。
取引には、TikTokユーザーによって、他のユーザーが自身の動画に使えるよう、TikTokの商用音楽ライブラリに追加された音楽も含まれており、「TikTokにおける主要なアーティストの宣伝という面でも、UnitedMastersと連携する」計画があるという。また、発表では、既にインディペンデント・アーティストの多くが、進行中のオリジナル楽曲や作品をプレビューするためにTikTokを利用していることが明かされている。
UnitedMastersのCEOであるスティーブ・スタウト氏は「二つを組み合わせることで、独立したまま有名になり、裕福になる明日のスターのためのプラットフォームを築きます」とコメントしている。TikTokの音楽責任者であるオレ・オバーマン氏は「今日、自分の寝室で音楽を制作しているTikTokアーティストでも、明日にはビルボードにチャートインするということが起こるようになるでしょう」と付け加えている。
ここで興味深いのは、TikTokが、主要レーベルおよび、インディペンデント・レーベルとのライセンス契約に加えて、従来のレーベル・システムの代替となるインディペンデントなエコシステムにおける自社の役割を拡大させる動きを取っていることだろう。TikTokはUnitedMastersを「TikTokに統合される初の音楽ディストリビューション企業」と説明しており、今後、こういった取引がさらに増えることが暗に示唆されているようにも思える。
これらのレーベル契約(短期間とされている)が更新時期に差し掛かったときが、興味深い瞬間になるだろう。従来のストリーミング・サービスと同様に、これらの交渉において、データが大きな役割を果たすことは疑いの余地がない。具体的には、レーベルがTikTokにおいて、新進気鋭のミュージシャンをできるだけ早く発掘し、UnitedMastersなどのサービスよりも先に、アーティストとレーベル契約を結ぶ手助けとなるようなデータが活用されることになるだろう。
また、TikTokを巡る米国における行政命令に関して、フィナンシャル・タイムズによると、テクノロジー大手のOracleが新たに、TikTok買収のための競争に参加した。さらに、TikTokおよび親会社のバイトダンス社は、行政命令の差し止めを求めて、ロサンゼルスの連邦地裁に訴えを起こしている。
訴えの中で、TikTokは2020年7月の時点で、世界中に6億8,920万人もの月間アクティブ・ユーザーがいたことを明かした。同時点での米国におけるTikTokの月間アクティブ・ユーザー数は919万人となっており、世界的なトータル・ユーザー数のおよそ13.3%を占めていることがわかった。
同社の広報担当者であるジョシュ・ガートナー氏は「行政は事実に注意を払わず、民間企業間の交渉に割り込もうとしており、適切なプロセスを経ていない」と非難しており、「法律が無視されていないことを確かめ、当社および当社のユーザーが公正に扱われるようにするには、司法制度を通じて、行政命令に意義を申し立てる以外に選択の余地はない」と語っている。
トランプ政権により、買収を行うための締切は新しく、1月からの新大統領を決める選挙の9日後である11月12日に設定されている。TikTokの米国における運命は、依然として不透明だと言わざるを得ないだろう。