2022年は中国の音楽市場では、新しい動きに注目が高まりそうです。
中国の国家著作権局は、同国の音楽サービス著作権の独占的ライセンス契約を正式に禁止する取り決めを発表しました。これにより中国の音楽ストリーミングサービスとは著作権を条件に特定のレーベルや音楽企業と契約が出来なくなります。中国の音楽市場では、これまでにも音楽サービスが楽曲を配信するためのライセンス契約を独自に結んできた歴史があり、他社のサービスで楽曲が配信できなかったり、収益が得られないといった独自の業界構造がありました。すでに中国の2大音楽ストリーミングサービスであるTencent Music (QQ Music、Kugou Music、Kuwo Musicを運営)とNetEase Cloud Musicは、独占ライセンス・モデルから、欧米と同じように非独占契約への移行を始めています。また、独占ライセンスの撤回を受けて、短尺動画サービスのKuaishouはワーナー・ミュージックと早速ライセンス契約を結ぶなど、音楽やコンテンツ産業への参入障壁も下がったと言えます。2021年までTencent Musicは中国で配信できる楽曲ライセンスの80%以上を同社が独占的に保有していることが、中国当局に問題視されてきました。
今回の発表では、国家著作権局は「レコード会社、楽曲著作権会社、デジタル音楽プラットフォームは、保証額および実際の使用状況のシェアに応じてロイヤリティ支払いに合意する必要があります」と説明しています。
中国はエンタテインメント業界やコンテンツ業界に対する規制を強化し続けています。その中には独占禁止規則や、未成年者保護に関する法令、個人情報の不正収集を取り締まる動きから、アイドル育成番組の放送禁止や「推し活」に対する規制など、多数の取締り強化が行われており、こうした動きによって、音楽や動画配信、ライブ配信、ゲームアプリといったエンタテインメント関連サービスを運営する企業は、コンテンツの収益化やライセンス契約など戦略の見直しを急ピッチで進めています。
これらの影響は、中国で日本人関連のコンテンツを配信したい日本のレーベルや音楽企業にとっても無視できず、収益面で直接的な影響を受けることが予想されます。中国では、Spotifyなど日本でも利用可能な音楽ストリーミングサービスが展開されていません。そのため、中国のデジタル音楽市場で収益化を狙うためには、同国独自の音楽サービスとのライセンス契約を結び、楽曲配信などから収益を生む方法を作る必要があります。独占ライセンス契約の撤廃は、中国の音楽市場が今後も規制強化の対象となる可能性を示しており、中国本土で音楽ビジネスを展開する日本の音楽業界にとっても、いつ規制が変わるか分からない状態が当分続くでしょう。