音楽業界向けのリサーチ会社、MIDiA Researchは、2023年のグローバル音楽市場の原盤売上を推測したレポートを公開しました。2023年は、グローバル市場の売上は351億ドル。前年比9.8%の伸びでした。ストリーミングビジネスの売上は219億ドル。ただし、前年比9.6増の引き続き増加トレンドですが、小幅な伸びで、何よりも、ストリーミング市場の成長率 (9.6%)が、市場全体の成長率 (9.8%)を初めて下回りました。市場全体でストリーミング売上が占める割合は62.5%に減少しました。音楽業界は成長トレンドの復活を歓迎すべきですが、ストリーミング市場が今後成長が鈍化する懸念を含めて、業界の収益構造とレコード会社のビジネスモデルは、大きな転換期を迎えていることをMIDiAは示唆します。
レコード会社の市場シェアでは、ユニバーサル ミュージックが売上推定100億ドルで、トップシェア (28.3%)を維持。成長率では、メジャー3社ではソニーミュージックが最も急成長して、市場シェアは20.3%でした。
MIDiAでは、メジャーレコード会社以外を「非メジャー・レーベル」(Non-major labels」とカテゴリー分けしており、この分野は市場シェアが4年連続で増加し、市場シェアの31.5%を占めています。2023年には、非メジャーは13%成長し、メジャー3社の9%を上回る成長率を達成しました。ここには、韓国のHYBEのような大手インディペンデントが含まれます。ただし、MIDiAは、The OrchardやVirgin Music Group、ADA、など、メジャーレコード会社が100%所有するディストリビューター経由で配信されるインディペンデントの売上は、それぞれのメジャーレーベルの売上に計上して、シェアを算出しています。非メジャー・レーベルの分野では、約70%を韓国のレーベルが占めています。
対象的だったのは、DIYツールを使って配信するアーティストを含む「アーティスト・ダイレクト」の市場で、非常に厳しい現実となりました。この領域は、再生や収入の伸びで苦戦しつつあり、収入の年間成長率は2021年の35.5%、2022年の17.9%に対して、2023年はわずか3.9%で、年間収入は推定18億ドルでした。市場シェアは、2021年は5.2%、2022年は5.7%を占めていましたが、2023年は0.4%低下し5.3%となり、初めてシェアが減少しました。
MIDiAが注目するビジネス・トレンドでは、権利利用の拡大 (Expanded Rights)があります。その背景には、レコード会社のスーパーファン・ビジネスへのシフトが大きく、ファンダムに注力したブランディングなどで収益を上げるために権利を拡大し始めています。よりロイヤリティと収益性の高いファンダムやスーパーファンを重視した事業への転換と、マネタイズを世界的に拡大しようとする流れが、レコード会社や音楽業界の中で起こっていることから、推測される拡大権利収入は年間15.5%増の35億ドルで、全世界の売上の10%に相当すると、MIDiAは算出しています。