ユニバーサル ミュージック グループとTikTokが、AIや音楽の価値に関する相違によって始まった対立から3カ月余りで、新たなライセンス契約で和解しました。
5月1日に両社からライセンス契約の更新で合意したことの声明文が発表されました。新たな契約内容は、両社の戦略的な協力関係を強調しています。
「UMGとTikTokは、TikTokの一流のテクノロジー、マーケティング、プロモーション機能を活用することで、UMGのソングライターやアーティストに対する報酬の向上、楽曲に対する新たなプロモーションとエンゲージメントの機会、生成AIに関する保護対策を実現します」と、UMGアーティストやソングライターのTikTok上での機会を拡大していきます。
ユニバーサル ミュージック グループ、TikTokとの新たなライセンス契約を発表 (UNIVERSAL MUSIC JAPAN)
UMGの原盤カタログ、そして、ユニバーサル ミュージック パブリッシング グループと契約するソングライターの楽曲も、TikTokで配信が再開します。
両社は、楽曲配信の再開を「迅速」に進めていきます。
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また、新たな契約では、「TikTokのeコマース機能を活用した新たな収益化の機会を実現するために協力」することも述べられています。
UMGのアーティストを支援するキャンペーンをグローバルで展開していくことも、言及しています。
加えて、「TikTokは、UMGのアーティストが、成長中のプラットフォームでそれぞれの力を発揮できるようアーティストを中心においたツールの構築への投資を継続」と述べています。
これらのツールは、アーティストの収益拡大や、グローバルなファンベースの構築、アーティストとファンの安全策強化を支援する、と説明しています。
そして、UMGの契約更新において重要な領域で、大きな懸念材料だった「AI」についても、言及しました。両社は「音楽業界全体に関わるAI開発において協力し、人間の芸術性とアーティストやソングライターの経済的な利益を確保する」と説明しています。
両社は、AIが生成して無許可で配信する音楽のTikTokからの削除、アーティストやソングライターのクレジット表示を改善するツールも提供する予定です。
(ただし、TikTokは、独自に音楽生成AIツールを開発しており、こうしたツールを使ったユーザーの投稿を認めていることも事実です)
UMGと同社契約のアーティストにとって、TikTokを活用した収益拡大が実現できることを示唆しており、ライブのチケットやアーティストグッズ、VIPグッズ販売などの分野でも、両社が連携することが考えられます。
今回、UMGとTikTokとの対立、そして新たな契約合意は、今後、UMGと他社プラットフォーム運営会社とのライセンス交渉における契約条件の基準が、一歩先に進んだとも考えられます。
推測に過ぎませんが、UMGが契約の更新で得られるメリットの中には、ショート動画プラットフォームから支払われる楽曲ロイヤリティの増額や、アーティストの優先的なマーケティング・キャンペーン、アプリ内でのプロモーションの機会拡大、などが考えられます。
今回のUMGの交渉によって、音楽業界では、成長著しいソーシャル動画プラットフォームにおける収益化が、より一層進むことが予想されます。
そして、露出拡大のプロモーションツールと捉えられてきたTikTokなどのショート動画アプリから音楽業界に対して、収益分配する流れが本格化するかもしれません。