先週、アマゾンがスマートスピーカーのEcho製品向けに、無料音楽ストリーミング・プランをローンチ予定と発表したことを受け、Spotifyの株価が下落した。では、YouTube Musicも無料・広告サポート型のストリーミング・サービス・プランを、Google Home向けにローンチするというニュースは、どのような影響力を持つだろうか。
実際には、YouTube Musicが発表した無料プランは、グーグルの音声アシスタントを搭載してさえいれば、どのスマートスピーカーでも利用可能だという。
YouTubeは、「YouTube MusicとGoogle Homeの組み合わせで、Google Homeにその時の場や雰囲気にあった音楽を流すようコマンドすると、YouTube Musicがリクエストに合わせて、あなたの好みにカスタマイズされたぴったりなステーションを流してくれます」と説明しており、完全なオンデマンド形式ではないようだ。特定のアルバムや曲、アーティスト、プレイリストを流したいユーザーは、YouTube Music Premiumにアップグレードする必要があるという。
現在のところ、無料・広告サポート型プランは、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、イギリス、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダ、オーストリア、日本の16カ国で利用可能になる予定だという。YouTubeによれば、今後、さらに対応地域は増える予定とのこと。
グーグルは、自社のスマートスピーカー上において、YouTube Musicの広告サポートプランをどう推すか慎重に進めているようだ。Google Homeを新しく買って起動する際、ユーザーは設定上のプロセスとして、YouTube Music、Spotify、Deezer、Pandoraの中からデフォルトの音楽サービスを選ぶことができるようになっている。
一つ言えるのは、今回の発表は、Google Home上でこれまでデフォルトのオプションであったGoogle Play Musicから、YouTube Musicへとユーザーを移行するためのグーグルによる試みの一環であるということだ。
しかし、Spotifyにとっては、スマートスピーカー分野におけるグーグルとの密接な関係もあり、注目すべき競争となるだろう。Spotifyはこれまで、米国とイギリスのファミリー・プラン登録者にスマートスピーカーのGoogle Home Miniを無料進呈していた。
今後、それらの人々や、Google Homeやグーグル音声アシスタントを搭載したスマートスピーカーを購入する人は誰でも、オンデマンドではないものの、YouTube Musicを無料(広告サポート)プランで聴くというオプションを持つことになる。さらに、アマゾンのEcho商品所有者も同様に、アマゾンの無料・広告サポートプランを利用可能になる。
欧米諸国では、アマゾンとグーグルの2社がスマートスピーカー市場シェアの大部分を占めている。調査会社のStrategy Analyticsによると、2018年には、8,620万台のスマートスピーカーが出荷され、そのうちの2,970万台がアマゾン製品、2,230万台がグーグル製品だったという。ちなみに残りの大部分は、中国のスマートスピーカーが占める結果となった。
スマートスピーカーはこれまで一般的に言って、無料音楽というよりは、サブスクリプション・ベースの音楽ストリーミング・サービスを聴くための手段として活用されてきた。アマゾンのPrime Musicなどは、プライム会員のプランの一部として使えるため、無料のように感じるが、一応有料サービスに分類されている。
アマゾン、グーグル、そしてYouTubeの動きは、この概念が変わってきていることを表している。今後、スマートスピーカーは、無料・広告サポート型の音楽にフォーカスする形に転向していく可能性がありそうだ。スマートスピーカーにおける無料・広告サポート型への動きが、有料サブスクリプションへの新たな入り口となるのであれば、音楽業界にとってはそう悪くないニュースかもしれない。