ビルボードが、米国におけるチャートのルールを変更し、今後、グッズやコンサートのチケットとセットで販売されたアルバムの売上をカウントしない方針を定めた。実際の変更がいつからスタートするかは、まだ明らかとなっていないが、適用された際には、「グッズまたはコンサート・チケットとセット販売するアルバムを、チャートに換算するためには、追加購入品として宣伝する必要がある」とのこと。この変更により、チャートは「消費者による意識的な購入決定をより正確に反映し、全てのアーティストにとっての競走条件を平準化できるだろう」とビルボードは述べている。
2018年8月には、Nicki Minajが、ビルボードのアルバム・チャートにおいて、1位の座をグッズとアルバムをセット販売していたTravis Scottに奪われたことにより、チャートを批判したことが話題となっていた(ただし、Nicki Minajのアルバムも、グッズではないが、チケットとセット販売されていた)。
2019年6月にも、エナジードリンクとセットで販売したアルバムがチャートの計算から除外されたDJ Khaledが、グッズとのセット販売が許されたTyler, the Creatorによってチャート1位の座を奪われたことが議論となった。昨年11月には、ビルボードが2020年1月3日から、セット販売に関する新たなルールを定める計画を発表していた。しかし、これらの変更が「消費者の意図を正確に反映するという意図された目標を達成できなかった」ため、今になってセット販売を完全に除外する方針を定めたのだという。
この発表により、アーティストおよびそのチームは、いくつかの決定を下す必要に迫られるだろう。グッズとチケットのセット販売は、アルバムリリース初週におけるチャートの順位を上げるための良い方法ではあったが、セット販売が存在するのは、それだけが理由ではない。セット販売は、アーティストにとっての重要な収入源となり得るのだ。しかし、新しいルールの下では、セット販売が成功すればするほど、アルバム・リリース初週のチャートに悪影響を及ぼす可能性が高くなるリスクがある。
あるいは、そうはならないかもしれない。歴史的に見て、チャートにおける規制の変化に対して、マーケティング戦略は常に適応してきた。もしかすると、例えば、セット販売はリリース初週を避けて、アーティスト・キャンペーンの後半で行われるようになるかもしれない。あるいは、業界における優先順位が売上からストリーミング再生数にシフトし続けている今、たとえセット販売を通じてアルバムを手に入れていたとしても、ストリーミング再生によってアルバム・リリース初週におけるチャートの順位向上に貢献するファンもいるかもしれない。今回の変更は、アメリカのチャートのみの適用だが、ビルボードの動向には世界中のチャート機関が注目しており、今後、世界的にチャートの換算方法が見直される可能性も十分あるだろう。