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 長い間、DJミックスは、使用している素材に関わるライセンスの複雑さゆえに、ほとんどの音楽ストリーミング・サービスにおいて、タブー扱いされてきていた。そのために、SoundCloud(ミックスをアップロードすることは可能だが、ロイヤリティは発生せず、著作権の削除申請を受ける可能性もある)やMixCloud(当初のラジオ・スタイルのライセンスでは、ルールに従っている限り、ミックスのロイヤリティが支払われていた)などのサービスにチャンスが残されていた。

 最近では、Dubsetなどの企業の努力によって、DJミックスが主要音楽サービスにも採用され始めている。スタートアップ企業のDubsetは、数年前からApple Musicと協力しており、Apple Musicは最近、「Tomorrowland: Around the World」フェスのライブDJセットを追加している。一方、Deezerは2019年12月に、DJミックスの試験版をローンチしており、「ユーザーがミックスを再生すると、そのミックスにフィーチャーされている各アーティストは、収益を公平に受け取ることができる」と約束していた。

 しかし、DJはどうだろうか?その点において、Boiler RoomとApple Musicの新たな取引は興味深い。Boiler Roomは最初の10年間の200以上のリミックスをApple Musicで利用可能にしており、Deezerと似た宣言をしている。「今回のパートナーシップは、DJセットに関係する全てのアーティストの補償という共通の目的からローンチされました。これは、DJへの支払いが行われることだけでなく、ミックスで使われている音楽の背後にいるアーティスト、プロデューサー、ソングライターへの補償も意味しています」とBoiler Roomは説明している。

 これらのミックスから、ロイヤリティがどのように計算されて支払われるのか、具体的な詳細は公開されていない。こういったミックスのアーカイブにとっては単純な作業とは言えないが、その他の前述の取り組みの中でも、アップルとBoiler Roomが課題に取り組んでいることは、エレクトロニック音楽分野にとっては非常に意義があるだろう。また、Boiler Roomは、最近新しくブランディングし直された、ラジオステーション「Apple Music 1」で、ミックスを宣伝し、ミックスに関わる人々へのインタビューを行う週ごとの番組を持っている。