英国レコード産業協会(BPI)と小売業界団体のERAが、2018年におけるイギリス録音原盤市場の成長に関する統計を発表した。
昨年イギリスでは、録音原盤売上が前年比8.9%増となる、13億3,000万ポンド(約1,847億1,525万円)になったという。ERAの統計によれば、イギリス国内におけるサブスクリプションへの消費額は、前年比37.7%増の8億2,910万ポンド(約1,151億893万円)となり、全体の消費額の62%以上を占める結果となった。
フィジカルの売上は前年比16.6%減の3億8,320万ポンド(約531億8,282万円)、ダウンロードの売上は前年比25.7%減の1億2,260万ポンド(約170億1,517万円)となっている。ちなみに、これらはイギリス国民が録音原盤に使った消費額の統計であり、ストリーミング・サービスの広告収益は含まれていない。
対して、BPIによる統計は、消費額ではなく、録音原盤の売上枚数とストリーミング再生回数から、イギリスにおける音楽消費を測った数字となる。BPIによると、アルバム相当単位(※)での売上は前年より5.7%成長したという。2017年には1億3,510万枚だったアルバム相当単位での売上が、2018年には1億4,290枚にまで伸びたとのこと。
※アルバム相当単位とは、10曲のシングル売上でアルバム1枚、楽曲ストリーミング再生回数1,000回でアルバム1枚など、様々な形態での音楽消費をアルバム一枚の売上に換算して表す用語。
中でも、ストリーミング再生によるアルバム相当単位は、前年比33.5%増の9,090万枚となり、全体の消費の63.6%を占めたという。この数字は、2014年には12.6%、2015年には22.1%、2016年には36.4%、2017年には50.4%を占めており、年々急速に成長している。ちなみに、アルバム相当単位をストリーミング再生回数に換算し直すと、昨年イギリスにおけるストリーミング再生回数は909億回ということになる。
ERAはフィジカルの小売業者とデジタルサービス両方を代表しており、イギリス大手・映像ソフト販売の「HMV」が2018年12月28日付で破産申請をした際には、フィジカルの規模と市場シェアが縮小傾向にあることに関して、それでもフィジカルには継続的な重要性があると強調した。
ERAのCEOであるキム・ベイリー氏は、「データを見れば、真の大ヒットを出すには、フィジカル・フォーマットの便利さとリーチ力が必要だとわかる。今日でも人々はサブスクリプションよりもCDにお金を使っているし、動画においても、動画サービスに登録している家庭よりも、DVDプレイヤーを持っている数の方が多い。フィジカルの小売業者に与えられた課題は、この時たま購入するだけの消費者の大きな市場をどう利用するかだ」と語った。
ERAによると、イギリス国民の22%がCDを買っているのに対し、20%がストリーミングの有料会員登録をしているという。しかし、後者(ファミリープランや学生プランの会員は除く)が月ごとに9.99ポンドを支払っているのに対し、前者の多くは、それほど定期的にはお金を使っていないと推測できる。「フィジカルの小売業者に与えられた課題は、この時たま購入するだけの消費者の大きな市場をどう利用するかだ」とベイリーは述べたが、HMVの末路を考えると、かなり難しい課題となりそうだ。