新型コロナウイルスは、現在、音楽業界にも世界的な影響を与えている。ライブからの収益が突然消えたことにより、生活が現実的な危険に晒されるミュージシャンや業界関係者が増えている。しかし、そういった人々を助けるために、実用的な措置を講じる人やプラットフォームが増えつつあるのも事実だ。
BandcampのCEOであるイーサン・ダイアモンド氏は、「今後数ヶ月間にわたり、アーティストをサポートし続ける方法を見つけることは、音楽を愛する人と音楽を制作するアーティストにとって、急務です」と語る。先週金曜日には、Bandcampは自社プラットフォームから生じた売上から自社のシェアを受け取らない試みを実施し、ファンがBandcampを通じて音楽を購入することで、アーティストを直接サポートできるようにしていた。「多くのアーティストにとっては、1日の売上が増加するかどうかで、家賃を支払えるかどうかの違いが生まれることもあるのです。」
アメリカでは、他にも、レコーディング・アカデミーとその慈善財団であるMusiCaresが、最初のステップとして、それぞれ100万ドルを寄付することで、「COVID-19救済基金」を立ち上げた。レコーディング・アカデミーの各支部も資金を集めている。「我々は、この資金が莫大である必要があることを認識しています。我々だけで成し遂げることはできません。そのため、レーベル、ストリーミング・サービス、そして、この重要な取り組みに参加できる人全てを含む、音楽コミュニティ全体にお願いをしているのです」とMusiCares議長のスティーブ・ブーム氏は述べた。
また、米国アーティストや作曲作詞家の権利保護を行う非営利団体「Artist Rights Alliance」も、ミュージシャンが直面する苦境に関して、米国議会のメンバーに書簡を出している。ミュージシャンは、現在の措置の影響を受けた数多くの人々の中の一つのグループに過ぎないと認めながら、「他の多くの仕事とは異なり、ミュージシャンやパフォーマーは、自宅で仕事をしたり、会議をメールで置き換えたりといったことはできません。我々のパフォーマンスの多くは、我々のほとんどが回復し得ない大きな財政的支出とともに、かなり前から計画されているものです。有給休暇や給与税免除など、伝統的な救済の多くは、我々には届かないことがほとんどです」と書簡は指摘している。「この前例のない課題に対処するのに十分な、大胆かつ広範な救済を望みます。」
アメリカ以外でも、音楽団体が政府に訴えかけるために必要なデータを収集し始めている。例えば、イギリスでは、音楽マネージャーズ・フォーラム(MMF)とミュージシャン連合の両方が、音楽コミュニティへの影響を把握するための調査を開始している。
ここ数日間では、こういった取り組みに参加すべきという、レーベルやストリーミング・サービスなどの大手音楽企業の潜在的責任に関しても、より多くの議論が展開されている。アマゾンの音楽担当でもあるスティーブ・ブーム氏もこれを認めている。「我々は皆、良い時も悪い時も、一緒です。」
ミュージシャンでありPRS for Music / Ivors Academyの役員であるトム・グレイ氏も、ツイッターに同様の趣旨を率直に述べている。「ツアー収入がなくなり、パフォーマーは日々の仕事を失いつつあります。ライブで演奏される楽曲から生じるロイヤリティも消滅します。」と彼はツイートし、ストリーミング・サービスと大手音楽企業の近年の盛り上がりが、ソングライターやパフォーマーへのリターンに反映されていないと示唆した。「音楽業界のエコシステムを気にかけるのなら、今こそこの問題を解決する時です」とグレイ氏は書いている。
また、イギリスでは先週、様々な音楽団体が、イギリス政府が、パブやクラブ、コンサート会場などを含む、公共の場所に行かないよう要請したことについて、これらの場所を閉鎖するよう指示しなかったとして、厳しく批判した。強制ではなく、要請である場合、会場側が保険適用を申請することが不可能となる懸念からだ。
UK MusicのCEOを務めるトム・キール氏は、「政府は正式な禁止令を出すかどうか、それがいつ発効するか、どういったイベントや会場が影響を受けるか、措置がどれくらいの期間実施されるかを明記すべきです」と述べている。インディペンデント・フェスティバル協会のCEOであるポール・リード氏も「首相の発表はライブ・イベントの禁止に相当します。我々は講じられた措置を理解していますが、政府も、そのように指示を分類すべきです。明確化の欠如は、広範囲にわたる混乱を引き起こし、この前例のない嵐を乗り切ろうと努力しているプロモーターに大きな害をもたらすことになります」と付け加えた。
日本でも、様々なアーティストがライブ配信に踏み切るなど、通常のライブ以外で活動を続ける方法を模索している。多言語対応のホワイトレーベル電子チケット販売プラットフォーム「ZAIKO」では、有料の電子チケット制ライブ配信サービスを早くから提供していた。これまでに、ceroがライブ配信を実施しており、5千人のファンが参加したという。