フランスを拠点にする音楽ストリーミングサービスのDeezerは、2回目のサブスクリプション価格の値上げを発表しました。
実施は9月21日から。個人プランとファミリープランが対象になります。
最初に価格改定が行われる国は、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、オランダです。新しい個人プランは1ユーロ上がって、月額11.99ユーロに。ファミリープランは2ユーロ上がり、19.99ユーロとなります。日本円に換算すると、それぞれ1,540円、2560円です(ただし、イギリスの個人プランは現行の11.99UKポンドで変更無し)。
Deezerは、2022年にヨーロッパ、アメリカで値上げを実施しています。2回目の値上げを行った、最初のDSPになります。アメリカでは、個人プラン、ファミリープランは10.99ドル、17.99ドルです。
音楽サブスク値上げが標準化するか?
音楽業界では、複数のレーベルや業界団体が、DSP各社に対して、値上げするよう、圧をかけ続けてきたこともあり、過去数年で、個人プランの標準価格は10.99ドルや10.99ユーロまで引き上げられてきました。
また、DSPの値上げ実施を定期的に行うべきという声も出ています。
ワーナーミュージック・グループのCFOであるエリック・レヴィン (Eric Levin)は、音楽ストリーミングサービスのサブスクリプション価格の値上げを歓迎すると共に、値上げが「音楽業界の標準になる可能性があります」と、2023年5月に登壇したJPモルガンのカンファレンスで発言をしています。
Deezerの2回目の値上げに対して、競合他社も新たな価格改定に踏み切るでしょうか? Deezerはサービス全体で有料ユーザー930万人を抱えていますが、そのうち560万人しか直接サブスクリプションに加入していません。それ以外のユーザーは、モバイルデバイスや他社メディアなどB2Bパートナーのサービスを通じて、Deezerを利用しているからです。
ユーザー規模から考察すると、SpotifyやApple Music、Amazon Music、YouTubeなどの競合他社の値上げは、音楽市場と業界全体の収益に対して、はるかに大きな影響をもたらします。
もう一つの疑問は、2回目の値上げに対する音楽サービス・ユーザーの反応です。前述のワーナーミュージック・グループでは、2023年Q3の決算報告で、CEOのロバート・キンセル(Robert Kyncl)は、「音楽サービスでキャンセル率が上昇している兆候は見られません」と答えています。
音楽業界では、音楽ストリーミング離れ、サブスクリプション離れに不安を感じているかもしれませんが、現状では、その証拠は見られないことが、レーベルのトップからも明らかにされました。しかし、それは1回目の値上げに関してです。上昇が続く生活費や物価高の中、一般消費者である多くの音楽ストリーミング利用者の金銭感覚が変わらない保証はどこにもありません。