音楽業界の世界では、ストリーミングサービス各社が、数億曲以上、どれほどの数のカタログ作品を配信しているか、ローカルアーティストのカタログを保有しているか、気になる人は多いかもしれませんが、配信楽曲を減らすことは、それほど議論されていません。

フランスの音楽ストリーミングサービスのDeezerは、Music Business Worldwideに対して、プラットフォームから2600万曲以上を削除したことを明らかにしました。2600万曲は、Deezerが配信する約2億曲の13%以上に相当します。

削除対象となった楽曲は、ノイズ、モノ・トラック・アルバム (同じ曲を並べただけのアルバム)、フェイク・アーティスト、過去12カ月で再生されていない楽曲などが含まれます。

Deezerの(間もなく退任する)CEO のジェロニモ・フォルゲイラ(Jeronimo Folgueira)は「狙いは、プラットフォームを整理し、ユーザーにとって価値のある楽曲に集中し、音楽を制作するあらゆるアーティストのシェアを拡大することです」と語ります。2600万曲の削除は、Deezerがユニバーサル ミュージック グループと共同で「アーティスト・セントリック」分配モデルを導入した2023年9月から行われてきました。

リサーチ会社のLuminateによれば、2023年に世界で配信された楽曲のうち、4,560万曲がゼロ再生を記録した、というデータもあります。

フォルゲイラは、Deezerの決算発表で、プラットフォームに配信される楽曲の数が増える一方、重複したコンテンツ屋、音楽以外のコンテンツも多数配信されることを指摘しました。そして、ユーザーに「不必要」なコンテンツが増えすぎると、ユーザー体験を阻害するだろう、と述べました。発表の場で、Deezerは、カタログ楽曲の精査を始めており、数百万規模の楽曲を削除していることも触れていました。

ユニバーサル ミュージックとDeezerが開発する「アーティスト・セントリック」分配モデルでは、月間再生数1000以上、ユニークリスナー数500以上の「プロフェッショナル・アーティスト」に対して、分配額を2倍にするダブルブーストを設定しています。その一方、非アーティスト・ノイズ・コンテンツには、再生からの収益分配を停止し、Deezer独自の機能的音楽コンテンツに置き換えます。

今回の楽曲削除は、再生数の無いノイズ・コンテンツや非音楽コンテンツが対象となりましたが、ユニバーサル ミュージックとDeezerは、不正再生や人為的に再生されるコンテンツに関しても、厳格な対応を目指しています。

アーティスト・セントリック・モデルの詳しい解説はこちらをご覧下さい。
【解説】ユニバーサルミュージックとDeezer、音楽ストリーミングの収益分配を変える新たな仕組みを発表。ファンを抱える「プロ・アーティスト」には還元、「ノイズ」の収益化を停止へ