COVID-19感染拡大が2020年の音楽業界にもたらす全体的な経済的影響を正確に知るものはまだいないが、だからと言って、アナリストが推測を止める訳ではない。ゴールドマン・サックスが推測を発表している

 レポートでは、「ライブ・イベントへの広範囲に及ぶ混乱が主な原因となり、2020年における世界の音楽売上高は25%減少すると我々は予測しています」と述べつつも、「2021年には強力な回復傾向が予想される」とし、その後数年はさらに成長するとゴールドマン・サックスは見込んでいる。

 ちなみに、ゴールドマン・サックスが述べる25%の減少は、ライブを含むあらゆる形式の音楽売上高に関わる数値だ。そして、トータルを最も引き下げている分野は明らかにライブ分野だと言えるだろう。ゴールドマン・サックスは、2020年、ストリーミング収益は18%増加し、録音原盤収益の3%増加に貢献するものの、ライブ音楽収益は75%減少するとして、「2015年に市場が成長傾向に戻って以来、最初の重要な減速の年になる」と予想している。また、今年の音楽出版の売上高は3.5%増になるという予想をゴールドマン・サックスは発表している。

 ゴールドマン・サックスは、近年、音楽業界の未来について強気な予想を立ててきていた。例えば、2017年には、録音原盤市場が2030年までに、年間売上高の観点で410億ドル規模になるとの予想を立てていた。ユニバーサル・ミュージックの親会社であるヴィヴェンディや、Spotifyなどの企業と提携していたり、投資をしている企業として、ゴールドマン・サックスの発表した予想は、鵜呑みにすべきではないとの指摘もあった。

(公平に言えば、これらの企業への投資およびその関係はレポートに示されている。例えば、現在ゴールドマン・サックスは、テンセント・ミュージックとヴィヴェンディの株式を所有しており、昨年には、アルファベットやSiriusXM、Spotify、テンセント・ミュージック、ヴィヴェンディに投資銀行サービスを提供している。)

ゴールドマン・サックスは予測を更新しており、2030年までに、音楽産業(※録音原盤市場のみではない)の年間売上高は、2019年の推定770億ドル(約8兆3,027億円)から84%増加した1,420億ドル(約15兆3,114億円)になると見込んでいる。また、2030年までに、有料音楽加入者数は12億人に上り、ストリーミング音楽分野単独で、その年の世界中の録音原盤売上高の86%を占める年間75億ドル(約8,087億円)の価値になるとゴールドマン・サックスは予想している。ちなみに、Spotifyはそのうちの3分の1を占めるとの予想だ。

もちろん、これらの予想が正しいかどうかは、2030年にならないとわからない。ただ、ライブ音楽業界に関しては「2022年までに、COVID-19前のレベルにほぼ戻ります」として、録音原盤市場は、今年3%まで成長が鈍化した後、2021年には26%、2022年には18%の成長率で回復するというゴールドマン・サックスの予測は、音楽業界にとって、一先ずの慰めにはなるかもしれない。