グーグルは、最新の音楽生成AIツールキット「Music AI Sandbox」を、開発者会議Google I/Oで発表しました。これは、グーグルとYouTube、そしてAI開発部門のDeepMindのコラボレーションで実現しました。
同ツールは、プロのアーティストやプロデューサー、ソングライター、音楽クリエイターの創作活動を支援する、AIとアーティストのコラボレーション目的で開発されたツールです。YouTubeは、「ゼロから新しい楽器の演奏を作成したり、新しい方法で音を変換することなどが可能になります」と説明しています。スタジオや制作現場で実際に活用されるツールの一つとして、アーティストやクリエイターが創造性を発揮するための作業を支援すると考えられます。
Music AI Sandboxのお披露目には、同ツールを使った創作活動を実験的に行っている、グラミー受賞アーティストのワイクリフ・ジョン、ソングライターのジャスティン・トランター、アーティスト兼YouTuberのマーク・レビレットが登壇しました。紹介動画では、Music AI Sandboxを活用して曲作りを行うスタジオの様子を垣間見ることができます。動画の中で、アーティストやクリエイター達は、テキスト・プロンプトを入力して音楽を生成している作業が見えます。実際に演奏した音源を別のジャンルに変えたり、頭に浮かんだ言葉で曲調をアレンジして、ボーカルを録音する過程も紹介されています。同ツールを使って制作されたデモ曲もYouTubeで公開されています。
グーグルとYouTubeは、これまでも、独自に音楽生成AIの開発に注力してきました。厳選したアーティストやクリエイターの協力を仰ぎ、テストを行っています。2023年には、ユニバーサル ミュージック グループと協力関係を結び、アーティストやソングライター、プロデューサーが音楽分野の生成AIの活用に向けて意見を行うグローバルプログラム「YouTube Music AI インキュベーター」を立ち上げました。
グーグルもYouTubeも、Music AI Sandboxの学習モデルで、どの音楽を使ったか、といった情報は公開していませんでした。ただし、メジャーレコード会社との連携などを通じて、YouTubeは、ライセンスや収益分配といった問題に厳しいレコード会社やアーティストに対して、学習モデルへの取り組みを既に説明してきた、と推測もできます。Music AI Sandboxは、DeepMindの音楽生成AIモデルのLyriaがベースになっています。Lyriaは、すでにYouTubeの「Dream Track」や「Music AI Tools」など、音楽生成AIに導入されてきました。
グーグルは、テキストプロンプト入力で1080p解像度のフルHD動画を生成できる「Veo」も発表しました。このツールは、映画制作者や動画クリエイターによってテスト利用されています。これらのコンテンツ生成AIツールもまた、Music AI Sandboxと同様、クリエイター、クリエイティブな創作活動を行うプロの支援を目的としています。