アマゾンのEchoや、Google Home、AppleのHomePodなどのスマートスピーカーは、新しい音楽の発見方法や聴き方を促し、大きな可能性を秘めている。音楽業界の短期的な課題としては、スマートスピーカーを最大限に活用するため、メタデータが十分に揃っているかを確かめることが挙げられるだろう。
Amazon Musicのプロダクト・マネージャーであるアイヴィー・テイラー氏は「レーベルやディストリビューターから、今後のリリースに関連した正確かつ一貫したメタデータを頂き、とても感謝しています。楽曲が我々のシステムに登録されるのが早ければ早いほど、Alexaが早く学習できるようになります。」と語っている。
ディストリビューション・サービスを提供するFUGAの製品開発部ディレクターのマイケル・キャシディー氏も、メタデータの重要性を次のように強調している。
「現段階では、メタデータがすべてです。インディペンデント・レーベルは、スマートスピーカー上でコンテンツが呼び出された時にちゃんと見つかるよう、必要なメタデータが全て揃った状態で楽曲が登録されているか、ディストリビューターに確認した方がいいでしょう。コンテンツがAppleとSpotify ArtistのID付きで配信されているか?作詞作曲家や貢献者が全て記載されているか?歌詞や楽曲のムードは登録されているか?などが重要です。」
元Spotifyのエディターで、現在はXIteの北米音楽カルチャー責任者であるアシーナ・クーミス氏は、「人々は、スマート・デバイスでは、特定の質問より、場面的文脈や、一般的なムードに基づいて、音楽を探す傾向が強くなります。ユーザーによるリクエストを、ユーザーが求める正しいコンテンツと結びつけ、音楽体験を高度な次元でパーソナライズするためには、完全かつ記述的なメタデータが必要なのです」と述べている。
インディーズ大手ベガーズ・グループのデジタル・アカウント・マネージャーのジェラルド・ユーナ氏は、小規模のインディペンデント・レーベルが不利な状況に陥る可能性を、次のように懸念している。
「スマートスピーカーのアルゴリズムによるストリーミング再生は、我々が提供するメタデータによって作動しています。レーベルにとって、メタデータの質を上げ、ムードや文脈、歌詞の追加など、メタデータ自体を充実させることは、今までになく重要となっています。メタデータを正しく揃え、ますます複雑になりつつあるメタデータ整備の最新情報に常に追いつくことは、インディーズやより小規模のレーベルなどにとっては、難題となりうるかもしれません。初期段階では、メジャーに所属する大規模アーティストの方が有利で、小規模レーベルは追い上げる形になるでしょう」