• 投稿カテゴリー:音楽業界

音楽再生とコンテンツ消費トレンドを世界各地で分析するLuminateのデータは、世界の音楽業界において、重要なデータソースの一つとなっています。

先日、Music AllyとMusic Business Associationがロンドンで開催した、グローバル音楽ビジネス・カンファレンス「NY:LON Connect 2023」に登壇した同社のグローバル担当副社長、ヘレナ・コシンスキー(Helena Kosinski)は、パンデミック以降の世界の音楽再生についてプレゼンテーションを行いました。

Luminateがデータを集計している49カ国の音楽市場において行われた調査によれば、2022年にはオンデマンド型の音楽ストリーミングサービスの再生は、いずれも成長していました。

しかし、コシンスキーは、成長速度に問題を提起しました。「音楽ストリーミングは年々成長しています。現在もオーディオストリーミングの成長は二桁規模です。音楽業界は、非常に健全な成長期にいます。2022年は前年に比べ若干鈍化しましたが、まだ20%台をキープしています」。

しかし、最も成長が低かったのは、世界の中で、音楽ストリーミングの普及が国全体にいち早く広がったノルウェーでした。「音楽ストリーミングの次に何が起こるかを見極めるには、この市場を念頭に置いておくと良いでしょう」とコシンスキーは警告しています。

その上で、Luminateが最近発表した2022年の音楽消費のレポート「2022 Year End Music Report」を紹介しました。

データによれば、オンデマンドのオーディオ及び動画ストリーミングは、2022年に世界で25.6%増加し、5兆3000億再生に達しました。そして、米国ではオンデマンドのオーディオストリーミングが史上初めて1兆再生を超えました。

Luminate調べでは、全世界で最も人気のあった楽曲はColdplayの「Hymn for the Weekend」で、90億再生以上のオーディオ及び動画再生がありました。最近のトレンドを踏襲するように、同曲は2016年にリリースされたカタログ楽曲です。

コシンスキーは、ストリーミングエコノミーで近年台頭してきた、ストリーミング新興国のデータも紹介しました。

例えば、Luminateによれば、インドネシアでは、人口の75%が音楽ストリーミングを利用しています。またインドネシアのリスナーの52%が、今後6カ月以内にストリーミングサービスに加入する予定があると、Luminateの調査で回答していました。

また、インドネシアではリスナーの74%が自国出身アーティスト以外の音楽を聴いています。日本を含めて、海外市場で自国のアーティストの再生を伸ばしたい業界にとっては、興味深いデータです。

コロンビアでは、人口の81%が音楽ストリーミングを利用し、53%が今後6カ月以内に加入する予定です。78%が海外の音楽を聴いていると、回答しています。

インドでは、人口の70%が音楽ストリーミングを利用しています。今後6カ月以内にストリーミングサービスに加入すると答えたリスナーは62%。そして、インド出身アーティスト以外の音楽を積極的に聴いているリスナーは45%でした。

Luminateでは、データを取得している国の音楽消費を分析し、音楽チャート上で「ユニーク・コンテンツ」となる楽曲が最も多い国、つまりその国でしかヒットしていない曲が多い国を調べ数値化したデータを紹介しました。

インド、日本、トルコ、ブラジル、タイ、ベトナム、韓国は、このデータで高得点を出した国で、自国の楽曲が音楽チャートを占める割合が高い市場でした。

これに対して、Luminateの「グローバル・ヒット・スコア」指標は、楽曲の世界的な成功を測定する目的で開発されました。各国における音楽ストリーミングの再生数だけでなく、海外市場への波及、自国以外の音楽ユーザーによる消費量をデータ化し、世界でのヒット化や人気を度合いを示します。

驚きの結果ですが、2022年に最も再生されたColdplayの「Hymn for the Weekend」は、「グローバル・ヒット・スコア」ランキングでは2位でした。1位はLil Nas XとJack Harlowの「Industry Baby」で、100点満点中65.3点を獲得しました。

Luminateが発表した「U.S. Year-End Music Report for 2022」は、こちらからダウンロードすることができます。