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音楽業界で次に起こるトレンドを予測し、企業の戦略や、消費者トレンドへの影響に関する議論を深めるには、音楽市場を統計的視点で検証することが、重要になってきます。

音楽業界を代表する現代の統計の代表例では、IFPIが毎年発表する世界の音楽売上に関する「Global Music Report」が、音楽業界の公式見解となっています。

しかし、2022年の世界の実績を知るには、次のレポート発表が行われる2023年まで待つしかありません。

ですが、音楽市場の見通しをいち早く予測したい経営者や企業にとって、貴重なデータはいくつもあります。

その一つは、リサーチ会社MIDiA Researchが定期的に発表している、グローバル音楽ストリーミングサービス市場シェアレポートです。

MIDiAは先日、2022年第2四半期の音楽サービスのシェアを推測したレポートを公表しました。これによると、MIDiAは2022年6月末時点で、世界の音楽サブスクリプション利用者数は6億1620万人と推計。2021年Q2推計値と比べて17.6%増加しました。

ただし、音楽サブスクリプション市場が順調に成長中と結論付けるには早すぎかもしれません。レポートでは「2022年上半期の純新規有料ユーザー増加数(4210万人)は、2021年上半期の5380万人を下回ったことから、世界経済の減速が伺えます」と指摘します。加えて、「2021年上半期の新規有料ユーザー増加数は2020年同期よりも多かった」とも述べており、巣ごもり消費の勢いが減少傾向にあることを示唆します。

Spotifyは2022年Q2に有料ユーザー数が1億8800万人に達したと報告しており、ここから俯瞰すると、Spotifyは音楽サブスクリプション市場の30.5%を占め、2021年Q2のシェア31%から僅かに減ったものの、同社が今でも業界リーダーであり、順調にシェアを維持していることが分かります。

ライバルとなる企業の推計値を見てみます。Apple Musicは8,470万人(シェア13.7%)。Tencent Musicは8,270万人(13.4%)。Amazon Musicは8,220万人(13.3%)。YouTube Musicは5,510万人(8.9%)、NetEaseは3,760万人(6.1%)となっています。

中国のTencent Musicは2021年Q4にAmazon Musicを抜いて、シェア3位に浮上。MIDiAは中国は現在、音楽サブスクリプションの利用者数では世界2位で、将来的に米国を抜いて1位になると予想しています。

これらの企業の多くは、一般向けに有料ユーザー数を頻繁に更新しないため、推計から個々の推移を測ることができます。予定なく更新される場合もあります。YouTube/Googleは、11月にYouTube MusicとYouTube Premium全体で8000万人の有料ユーザーを獲得したことを発表しています。

MIDiAはレポートにおいて「世界の音楽ストリーミング市場は、成熟し切った欧米市場の減速と、他地域の活発な成長とのバランスにより、極めて重要な局面を迎えています」と述べています。とりわけ、不安定な経済状況や不景気は、音楽業界の新規サブスクリ・ユーザー獲得の減速に影響を与えると予測します。

飽和状態に入る欧米市場に比べて、可能性が大きいのは、新興市場での音楽ビジネスとサブスクリプションの普及です。ローカル音楽や、J-POPなど特定のオーディエンスに最適化されたジャンルを受け入れる余地のあるDSPが新興市場では影響力を持つため、グローバルコンテンツ化していないジャンルがビジネスを拡大させる余地が多くあります。