今年中に音楽コンサートが再開されたとしても、国ごとに、ソーシャル・ディスタンスのルールがどのように発展するかによって、様相は全く異なるものになるだろう。一方、COVID-19の感染拡大の期間中にも、ライブ配信やバーチャル・コンサートを中心に様々な活動が行われている。これらは今後、どのような発展を見せるだろうか?

 調査会社のMidia Researchは、バーチャル・コンサートが、多くの有料体験を含む「明確に区切られた、フリーミアム・プロダクトの枠組みを構築すべき」と示唆するブログ記事を投稿している。

 Midia Researchは、構築を実現するための原則を示している。希少性(ギグの数や、地域を限定するなど)、より良い品質、より洗練された収益方法およびショーのセグメント化、より優れたプラットフォームのセグメント化(大手テクノロジー・プラットフォームはスタジアムやアリーナとしての役割を、アーティストアプリのようなポータル外の場所は、より小規模かつ希少性のあるプレミアム・イベントとしての役割を果たすなど)、より良い発見方法(「テレビの番組表に相当するものをバーチャル・コンサートにも作る必要がある」)などが挙げられている。

 ライブ配信は世界中で行われているが、関連する「バーチャル・コンサート」のカテゴリにも動きがある。顕著な例としては、合計2,770万人を魅了した、ゲーム「フォートナイト」におけるTravis Scottのパフォーマンスが挙げられる。しかし、VRや他のオンライン・ゲームでも同様に実験が行われている。

 VRスタートアップのMelodyVRは、イギリスのWireless Festivalのために、Live Nationの子会社であるFestival Republicとパートナーシップを組んだ。実際のWireless Festivalはキャンセルされたものの、MelodyVRは代わりに、7月3日から5日にかけて、ロサンゼルスとロンドンにあるMelodyVRのスタジオからのVR放送も含む、「未公開のパフォーマンスや独占映像などを週末に渡って」公開するという。

 別のニュースでは、ゲーム「マインクラフト」を使用して開催されるバーチャル音楽フェスもアナウンスされている。「Electric Blockaloo」と呼ばれるこのフェスは、6月25日から28日まで開催される。ダンス・ミュージックに焦点を当てており、Diplo Presents: Higher Ground、A-Trak Presents: Fool’s Gold、Claude VonStrokeのDIRTYBIRD Records、Above & Beyondなど、300組以上のアーティストが出演するという。

 イベントはチケット制となっており、ファンは一般入場券もしくはVIPアクセス券を購入する前に、アーティストが共有するリンクから、個別に「ゲストリスト」のコードを見つける必要がある。「Electric Blockaloo」はプロモーターのRave Familyが計画しているマインクラフト上のフェス・シリーズの第一弾となっており、5月に同じくマインクラフトを使用して開催されたバーチャル・フェスティバル「Block By Blockwest」に続くイベントとなっている。

 日本でも、ライブ配信に関する動きが活発化している。すでに、新たなライブ配信プラットフォームが次々と生まれてきているが、そのリストにまた新しいサービスが加わった。音楽ライブや演劇などのチケット電子化、座席管理、来場者分析などを提供するサービス「teket(テケト)」が、無観客ライブなどの開催を手軽に行えるようにするため、ライブ配信を電子チケット販売できる機能を追加した。

 新機能をいち早く活用しているビレッジマンズストアは、ライブ自体は無料で配信しつつも、ライブを盛り上げるコンテンツをteket内でチケット販売する取り組みを実施する。チケットメニューとしては、「ライブ応援 100円」、「アーティスト写真ガチャ 500円」、「アーティストお届けドリンク 600円」などが用意されている。ライブ配信からの収益化において、多様な選択肢を設けるという意味で、画期的な取り組みだと言えるだろう。

 また別のニュースでは、総合エンターテック企業のplayground株式会社は、6月上旬に、音楽ライブ配信まとめメディア「#おうちライブ」をリリースする。「音楽ライブ配信を、もっと身近に。」をコンセプトに、音楽ファン向けに、日付やアーティストなどのライブ配信情報をジャンル別にまとめて届けるサービスとなっている。

 「#おうちライブ」では、番組表形式でライブ配信スケジュールを探せる機能が後日実装される予定であり、Midia Researchが提唱する原則の一つである「より良い発見方法」を提供する存在となりうるだろう。

 日本では、緊急事態宣言が全国的に解除され、政府は5,000万円を上限に、COVID-19の影響で延期や中止を余儀なくされたイベントを改めて開催する場合の費用の半額を補助する方針も打ち出している。しかし、大規模なイベントはまだ、段階的な緩和が見込まれている状態だ。

 制限がある状況下でもイベントを再開すべく、業界を問わず、様々な取り組みがスタートしている。例えば、チームラボは、時間指定入場制チケットの販売ができ、時間あたりの入場者数をコントロール可能な時間制来館者管理システム「チームラボチケッティングシステム」を開発しており、美術館や博物館、水族館、遊園地などの様々な施設やイベントに最短1ヶ月で導入可能だと発表している。

 Midia Researchが述べるように、ライブの問題に対する短期的および中期的な解決方法を見つけていくことが、アーティスト・コミュニティおよび音楽業界全体にとって必要不可欠となる。「ロックダウンの時代をはるかに超越する大きなチャンスがここにはあります。ゲームと音楽の単なる未来ではなく、ライブ音楽のもう一つの未来を作り上げる瞬間なのです。今行う取り組みは、やがてはロックダウンの大きな遺産となるでしょう。」