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イギリスのリサーチ会社のMIDiA Researchが、先日、発表した2024年第2四半期の音楽業界の成長レポートによれば、前年同期比でレーベル、音楽出版社、音楽ストリーミング、ライブ企業の収益は9.6%増加し、207億ドルに達したことが推測されています。

しかし、このレポートでは、課題も指摘されています。それは、音楽ストリーミングにおける消費行動の減速トレンドが、複数のDSPで見られたことです。MIDiAのアナリストであるマーク・マリガン (Mark Mulligan)によれば、「2023年Q2から2024年Q2にかけて、週間アクティブユーザー (WAU)が成長したDSPは、SpotifyとYouTube Musicのみです」と述べます。その他の全てのDSPは減少傾向が見られました。2020年Q2から2022年Q3までは、全てのDSPのWAUは安定して成長してきました。それ以降は、あらゆるサービスが、成長の停滞や減少していると推測します。

MIDiAはまた、DSPでは、WAUの減少だけでなく、月間での音楽再生行動と音楽に関連する行動も減少していると述べます。例えば、YouTubeは、2022年Q3以降、音楽ビデオの再生におけるWAUが減少していると、MIDiAは推測しています。これは、音楽再生や音楽コンテンツ消費が、ショート動画との競争激化によって、減少していることを示唆しています。また、DSPでの音楽消費の減少は、サブスクリプション支払いを含む生活費の世界的な高騰や、他の業界のエンタテインメントとの競争に直面していることの影響も伺えます。

しかし、前述の9.6%の収益増加の内訳では、音楽出版社とDSPが最も急速に成長を達成しています。一方で、ライブ業界は、成長の鈍化の兆しが見え始めてきました。Live NationとEventimの成長率は合計で8.2%でした。同率が一桁になったのは、2021年Q2以来です。

DSPの成長率鈍化は、日本の音楽業界だけでなく、世界の業界が直面する課題の一つです。一つの見解として、WAUが減少する中でも、DSPの有料会員数を増加させ続けることを健全な成長として捉えることができます。無料のアクティブユーザー数が減少しても、複数のDSPで有料会員が伸び続けることは、音楽業界の収益増加へと繋がります。