ロックバンドのダイナソーJr.の「Over Your Shoulder」という25年前にリリースされた楽曲が、突如日本のビルボードTop100というチャート(2月11日付)に現れるという現象が起き、海外でも話題を呼んだ。トップチャートで18位を記録した同曲のYouTube視聴回数は累計約810万回にもなったという。
今回の事件のからくりは、実はYouTubeにある。チャート発表時にビルボードは、下記のコメントを発表している。
「当週、YouTube再生ランキングにクイーン以外の洋楽も多数順位を上げており、チャート公開時刻の許す限り原因を究明したが、残念ながら原因となる動画を特定することが出来なかった。おそらくはそれらの洋楽楽曲を使用したユーザーによりアップロードされた動画が大きく再生数を伸ばしたものと思われる。」
米音楽メディアのPitchforkは、「Over Your Shoulder」が日本でシングルとしてリリースされたことや、再リリースされたことは一度もないと指摘している。「最近の人気映画で使われているわけでもなければ、インターネット・ミーム(※インターネット上で流行する画像や言い回しのこと)として楽曲や動画に使われているわけでもない」と同メディアは分析している。
それから、様々な推測がされ、ついに真相が徐々に明らかとなってきた。パレードオール社の鈴木貴歩氏は、「この曲と日本とのつながりは明白です ー 「Over Your Shoulder」は以前、「ガチンコファイトクラブ」というテレビ番組で使用されていました。(※翻訳)」とツイートをしている。
テクノロジー系サイトのギズモードも、YouTubeに無断でアップロードされた同番組の動画が、口コミや懐かしさなどにより、1月下旬に突如人気を博したことで、YouTubeのアルゴリズムが働き、数多くのユーザーにおすすめ動画として表示されたことを指摘している。
該当の動画は既に削除されているが、ダイナソーJr.の楽曲がチャートに入るくらいには十分長い期間YouTube上に存在していたと言えるだろう。
今回の事件は、YouTubeやチャートの測定方式における、特異な例として片付けられるかもしれない。しかし、今回の件は、いかにYouTubeが日本で浸透しているかを象徴的に表しているとも言える。
2018年4月に日本レコード協会が発表した調査では、音楽を聴く方法の1位がYouTubeとなっていた。調査では、フィジカルのCDを聴いたのが54.6%、デジタルの音楽ファイルで聴いたのが38.7%、ストリーミング・サービスで聴いたのが10.4%に対して、YouTubeを利用したと回答したのは全体の61.6%にもなっている。