Spotifyにおいて、単なるシングルやアルバムのアートワークの代わりに、モバイル・アプリ上で短い動画のループを流すことのできる、「Canvas」という機能が、Spotify for Artistsツールを介してより多くのユーザーに開かれている。
Music Allyが最初にこの機能に気づいたのは、昨年の始めで、Superorganismがシングル「Everybody Wants To Be Famous」に、まだ名前すらなかった同機能を利用した時だった。それ以来、多くのアーティストやレーベルが、同機能をテストするために招待され、今回、Spotifyはテスト規模を広げることとなったようだ。
全てのアーティストが使用できるわけではないが、「最もアクティブなSpotify for Artistsの一部」にこの機能を解放するとSpotifyは発表すると同時に、機能の使い方と、最大限に活用する方法についてのブログを投稿している。
公開された10のコツのいくつかは次の通りだ。誰かが歌ったりラップしている動画をループさせるのは避けること(ビジュアルはオーディオに同期するわけではないため)。早すぎる編集や、グラフィックがフラッシュするのは避けること。3つの異なるタイプのループ(連続ループ、ハード・カット・ループ、リバウンド)を把握すること。一つのアルバム内のすべての楽曲を通じて、ストーリーやテーマを伝える方法を考えること(これを実現する好例として、Alex Wileyによる「Tangerine Dream II」が挙げられている)。
これらは全て、Spotifyが音楽をより視覚的に提供するための戦略に結びついている。最近では、Billie EilishやTaylor Swiftなどのメジャー・アーティストがより視覚的かつインタラクティブなアルバム/プレイリスト体験をSpotify上で実施していた。
Canvasは、もちろん、新しいアーティストや小規模レーベルにとっても、アクセスしやすく、費用対効果の高い機能であるため、機能をじっくりと展開することで、予算の制約を回避しなければならないクリエイティブな心を持った誰かが、この機能を使って真に面白いことを実現することができる可能性も高まるだろう。
それぞれの楽曲ごとに異なるビデオ・ループを用意し、連続して再生すると、一連の繋がったビジュアル・ストーリーが浮き上がるようにするなど、「アルバム全体を通して一貫したテーマや物語を作成する」というコツに基づいて、K-PopアーティストのSuperMがCanvas向けに、興味深い取り組みを実施している。
SuperMは、ツイッター上で、ファンに自身の写真をアップロードし、バンドをタグ付けするように呼びかけた。それらの写真は並べられ、SuperMの『The 1st Mini Album』内に収録されている7曲のCanvasに追加されていた。写真はそれぞれ赤いフィルターがかけられ、バンドのロゴが追加されていたため、誰の写真であるかに関係なく、ビジュアル的な一貫性が保たれていた。
多くのファンが素早く、かつ簡単に参加することができ、参加した後には、ファンが自分の顔を見つけるために楽曲を何度も何度も再生すること、また、自分が載っていることを周りに自慢するために、友人にも楽曲を再生することを推奨するだろうことは簡単に予測ができ、非常にシンプルだが、同時に絶大的な効果を持つアイデアだと言える。このミニアルバムはアメリカで1位となり、SuperMはデビュー時にビルボード200のトップを飾る初のK-Popグループとなっており、Canvasの効果がかなり高かったことがうかがえるだろう。