Spotifyは4月中旬に、アーティストがSpotifyのプロフィールを通じて、自身および自身のチームや、SpotifyによるCOVID-19の音楽救済プロジェクトに参加している慈善基金および組織のために資金を調達できる「Artist Fundraising Pick」機能をローンチした。4月末までに、およそ5万組のアーティストがこの機能を使用していたという。
ただし、一つ問題なのは、一体どれくらいのリスナーが「Artist Fundraising Pick」機能に気づいたかということだろう。アーティストのSpotifyプロフィールにアクセスしないと、「Artist Fundraising Pick」は表示されない。アーティストのグッズやチケットの販売機能に関しても、どれくらいSpotifyを使用している音楽ファンに見られているのか、同じように疑問に思うところがあった。これらの機能は、アーティストがSpotifyとパートナーを組み、ファン向けメールオファー「Fans First」を送信する場合を除き、表示場所が主にプロフィール・ページに限定されているからだ。
しかし、Spotifyは今度は「Fans First」を通じて「Artist Fundraising Pick」に注目を集めようとしているようだ。Spotifyは資金調達機能を宣伝するために、パーソナライズされたメールを送信するという。「我々はこの現状で、お気に入りのアーティストをサポートしている世界中の音楽ファンからインスピレーションを得て、ファンが聴いている中から『Artist Fundraising Pick』をプロフィールに設定したアーティストのリストをパーソナライズして共有することにしました」とSpotifyのメールは説明する。ファンはアーティストによって選択された様々な資金調達先にクリックで移動できるようになっている。
小さなことかもしれないが、Spotifyによるまだまだ初期段階のファンからの資金調達のための取り組みを、アーティスト・プロフィールの外、リスナーの受信ボックスにまで持ち出すことになるため、認知度を大きく高めることに繋がるかもしれない。本機能による寄付が「散発的」であるという一部のアーティストからの批判や、本機能がアーティストのストリーミング・ロイヤリティというより大きな課題に対応する上での絆創膏程度の価値しかないという酷評にも少しは対処できる可能性もある。
今回のパーソナライズされたメール配信は、少なくとも資金調達機能が発展を遂げており、Spotifyが本機能を広く推していこうという意志を持っていることを示していると言えるだろう。Music Allyとしては、今後、Spotify、そしてその他のストリーミング・サービスがBandcampやPatreonなどのプラットフォームと有意義な統合を果たすことも期待したい。ストリーミング・サービスは、愛するアーティストを直接サポートしたいというファンの意欲を駆り立てるエンジンになることができ、また、そうなるべきであって、その意味では、前進は前向きに捉えることができるだろう。
また、別のニュースでは、Spotifyがポッドキャスト広告に関して、「アプリ内オファー」という新たな取り組みを試しているとのこと。ユーザーがポッドキャストを再生中に、あるスポンサーからの広告として、特定のオファーを聞いたときは、リンクをタップすることで、Spotifyのモバイル・アプリ内のポッドキャスト・エピソードのページから、そのオファーを引き換えることができるというものだ。
「ほとんどのポッドキャストは、仕事の準備中や運動中、用事の最中、夕食の調理中、皿洗いの最中など、画面を見ていない時に再生されています。広告から魅力的なオファーを聞いた時には、電話やコンピューターを触れるようになったときのために、心の中にメモをしなければなりませんでした」とSpotifyは今回解決しようとしている、広告主及びリスナーにとっての問題を説明した。
「オファーについて覚えていても、ブラウザーを開いて、覚えづらいクーポン・コードや長いURLを入力する作業が残っています。今回の新機能であるアプリ内オファーによって、この摩擦を減らし、リスナーが広告主およびポッドキャスト内で紹介されているオファーに簡単に繋がれるようにします。」
新機能は、まず、米国及びドイツで、一部のブランド向けにテスト運用されるとのこと。
また、Spotifyは、ユーザーのお気に入りのアーティストの最新リリースを聴くように勧める、モバイル・アプリ内のポップアップ表示ツールである「Marquee(マーキー)」機能に関して、新しく、機能自体を宣伝するための新たなウェブページをローンチした。米国とカナダでは現在、有料広告枠として、マーキー機能のベータテストが行われている。
ページでは、初期テストからの統計も一部公開されている。例えば、Spotifyは、マーキー機能のコンバージョン率が20%だと主張している。つまり、マーキー表示を見たSpotifyユーザーの20%が、2週間以内に、宣伝されている最新作を再生しているということだ。
さらに、マーキー表示を見たリスナーは、2.2倍も「楽曲の保存およびプレイリストへの追加率の平均が上昇」したことを示すために、30件ものキャンペーン調査を引用している。また「我々の調査によると、楽曲の保存およびプレイリストへの追加は、6ヶ月後の該当アーティストのストリーミング再生数が250%増となることと相関しています」とSpotifyは述べており、楽曲の保存及びプレイリストへの追加の効果を強調している。
シカゴのデュオであるDramaによるマーキー機能の利用例に関するケース・スタディも公開されている。Dramaによる広告を見たリスナーの25%が、該当のアルバムから少なくとも一つの楽曲を保存、もしくはプレイリストに追加しており、「アルバム全体よりもはるかに多い」平均17曲をストリーミング再生していたとのこと。