Spotifyが、「音楽とオーディオ制作およびコラボレーションのマーケットプレイス」企業のSoundBetterを新たに買収した。SoundBetterは、ミュージシャンが、一緒に仕事ができる、他のミュージシャンやプロデューサー、ミキシング/マスタリング・エンジニアを探すのに役立つサービスを提供しており、2012年のローンチ以来、18万人以上のアーティストが登録している。
現在のところ、SoundBetterは、Spotifyのアーティスト部門内で、これまで通り運営される予定だという。「今後数カ月にわたって、さらにサービスの質を向上させるために投資していきます」とSpotifyは約束している。
今回の買収は、Spotifyが最近アーティスト向けに実施していた、「プロバイダ・ディレクトリ」の拡張に関するアンケート調査と結びついている。現在のプロバイダ・ディレクトリでは、アーティストおよびレーベル・ディストリビューション・サービスのリストのみを取り扱っているが、アンケートでは、セッション・ミュージシャンや、ボーカリスト、ミキシング/マスタリング・エンジニア、その他のコラボレーターのリストがあったらどうかをアーティストに質問しており、まさに、SoundBetterが提供するサービスと重なる内容となっていた。そのため、今後ある時点で、SoundBetterがSpotifyのプロバイダ・ディレクトリに統合される可能性も高いと言えるだろう。
SoundBetterは、Spotifyがどのようにアーティスト・ツールから収益を生み出そうとしているかを垣間見ることができる最初の例になる可能性もある。SoundBetterは、アーティストが「仕事」を投稿し、コラボレーターを雇うことで機能するシステムであり、サイトを通じてこれらの人々に支払いをすることを奨励している。SoundBetterを通して支払いをすることで、アーティストがコラボレーターによる仕事に満足したときに支払いが行われ、何か問題が発生した場合にはSoundBetterによるサポートを受けられるようになっているとのこと。
SoundBetterの「よくあるご質問」ページでは、「SoundBetterがお手伝いする仕事に対して、少額の手数料をコラボレーターに請求します。コラボレーターは手数料を支払うことで、求人情報、プロジェクト・マネジメント・ツール、オンラインにおける評価に繋がる信頼性とセキュリティの高さ、そして検証済みのレビューを手に入れることができます。」と記載されている。つまり、SoundBetterを通じて手配された仕事は全て、SoundBetterに、そしてこれからはSpotifyに、手数料をもたらすことになっているということだ。
現在、Spotify for Artistsのツールを使用しているアーティスト数は40万組以上となっており、Spotifyは今後、SoundBetterをそれらのアーティストに宣伝していくことになるだろう。SoundBetter利用者がSpotify管理下で増加すれば、少額の手数料が大きな利益をもたらす可能性もある。
もちろん、これは推測に過ぎない。Spotifyが手数料を廃止し、レコーディング・プロジェクトにおける無料仲介者としてSoundBetterを理ブランディングする可能性もある。しかし、どちらにせよ、今回の買収は、Spotifyの「両面市場」が、ある時点で同社の収益源となる可能性を思い出させるものとなったと言える。
Spotifyがプラットフォーム上におけるマーケティング関連ツールをレーベルに提供する可能性に注目しがちだが、アーティスト(今回の場合はコラボレーター)が同社の将来の収益に貢献する可能性もあるということを覚えておく必要があるだろう。