テイラー・スウィフトの音楽が、TikTokに戻ってきたことは、音楽業界で驚きを持って伝えられました。

ユニバーサル ミュージックは、TikTokとのライセンス交渉で決裂したため、1月末にプラットフォームから同社と契約するアーティストでUMGが原盤権を所有する楽曲を配信停止したままで、緊張状態が続いています。

テイラー・スウィフトのTikTokでの配信再開について、ユニバーサル ミュージックから公式な見解は未だ発表されていません。

Music Ally は同社の広報に問い合わせましたが、回答は得られませんでした。

今回の楽曲配信再開は、ユニバーサル ミュージック社内にも寝耳に水だったことを、ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えています。

関係者によれば、最新アルバム『The Tortured Poets Department』のリリースを4月19日に控える中、テイラー・スウィフトのマネジメントは、レーベル幹部と戦略ミーティングを行いました。

その席で、テイラー・スウィフトのチームは、TikTokを含むプラットフォームで行うアルバム・マーケティングのプランを準備している、ことを伝え、その一貫で、TikTokでスウィフトの楽曲の配信を再開させる計画を明らかにしました。

マネジメントからの連絡はレーベル幹部には初耳で、驚いたと言います。レーベルは、配信を思い留まるよう、再考を求めましたが、スウィフトのマネジメントはその意見には動じませんでした。

権利を自ら管理できるテイラー・スウィフト

なぜ、テイラー・スウィフトは、ユニバーサル ミュージックと契約しているにも関わらず、TikTokで楽曲を配信出来たのでしょうか? 推測では、スウィフトは、楽曲の権利を100%所有できる契約条件を持ち、一般的なアーティストがレーベルと結ぶ原盤契約と全く異なる条件が揃っているため、と言われています。

テイラー・スウィフトは、2018年、ユニバーサル ミュージックとリパブリック・レコードと複数年の独占契約で合意しました

その契約条件は、グローバル・レコーディング契約であり、彼女とユニバーサル ミュージックとの関係は、スウィフトは制作した音楽をレーベルにライセンスする「原盤パートナー」となりました。

そのため、テイラー・スウィフトは、ユニバーサル ミュージックと契約では、原盤権をアーティスト側が所有することが可能になっています。

加えて、テイラー・スウィフトは、ユニバーサル ミュージック パブリッシング グループとグローバルな出版契約を2020年に結んでいます。

権利所有の観点では、テイラー・スウィフトは、どのプラットフォームに対して彼女の楽曲をライセンスすることができると予想されます。

そのため、TikTokで配信する最終決定権も、配信再開を許可する権利も、レーベルではなく、アーティスト側が持っている、と考えられます。

『テイラーズ・ヴァージョン』アルバム収録の楽曲含む、多くのカタログ楽曲がTikTokに戻ってきたことから、アルバム・リリースを盛り上げたいTikTokユーザーの間では再びUGC投稿が盛り上がる事が予想されます。

ユニバーサル ミュージック最大のスター・アーティストが、TikTokに楽曲を戻した影響は、今後のライセンス交渉がどう変わるか。また、他のアーティストがテイラー・スウィフトに続いて配信を再開する可能性はあるか。TikTokとのライセンス契約を注視してきた音楽業界にとっては、新たな疑問が生まれます。

勿論、TikTok側も、世界最大のアーティストのアルバム・ローンチ・キャンペーンに加わり、社会的そして文化的なトレンドを作りたいと考えているはずで、そのため、テイラー・スウィフトの配信再開は、大きな勝利として歓迎しているはずです。