テイラー・スウィフトが、COVID-19による自粛期間中にレコーディングした最新アルバム『Folklore』をサプライズ・リリースした。SNSでファンが歓喜したのはもちろん、本作は自粛期間中にリリースされたアルバムの中でも、最も人気あるアーティストによるものだった。そのため、リリースのマーケティング戦略には、音楽業界からも熱心な注目を集めている。

 戦略には、全てのストリーミング・サービスおよびダウンロード・ストアに作品をリリースすること、そして、包括的な動画戦略も含まれている。また、YouTubeには、アルバム全曲の公式リリック・ビデオが公開され、「Cardigan」という楽曲の公式ビデオの再生回数は公開から4時間で150万回以上を記録。そして、公開中のテイラー・スウィフトの過去動画のサムネイルは、「Folklore: available now」という宣伝の文字に置き換えられているほど、カタログ動画でもマーケティングを行っている。

 D2C戦略もある。ファンは、テイラー・スウィフトの公式ストアから最新アルバムを、CD、アナログ盤、カセットの形式(それぞれデジタル・ダウンロードも含まれる)で購入可能だが、全て異なるデザインのアートワーク及び歌詞ブックレットが付いたコレクターズCDとアナログ盤が8種類も用意されており、価格はそれぞれ13ドル、26ドルとなっている。これらのコレクターズ盤は、7月30日までの1週間のみ期間限定で購入可能だ。また、楽曲ダウンロードを含むグッズ(15ドルのキーチェーン、20ドルのマグ、25ドルのリトグラフ、30ドルの帽子)も、フラッシュセールとして、25日まで購入可能となっていた。D2C戦略は第二弾に突入しており、現在はスマートフォン・スタンド、髪留め、バンダナなどが限定販売されている。

 Republic Recordsによると、本作は公開から24時間で130万枚以上を売り上げ、Spotifyで8,060万回再生、Apple Musicで3,550万回再生されたとのこと。世界的な売上も順調だが、中国のストリーミング・サービスであるNetEase Cloud Musicの数字も興味深い。『Folklore』は、NetEase Cloud Musicの無料及び有料サービスに加入しているだけでは聴くことができず、聴くためにはアルバム購入が必要だ。アルバムは25人民元(約375円)、楽曲は2人民元(約30円)ごとに販売されており、購入すると楽曲をダウンロード及びストリーミング再生できるようになる。また、テイラー・スウィフトは、NetEase Cloud Musicでアルバムを購入したファン向けに、パーソナライズされた感謝のメッセージを提供している。

 Music Allyの調査では、中国で『Folklore』が公開されてからわずか30分で、NetEase Cloud Musicだけでも10万枚以上の売上があった。公開から6時間以内には、20万枚を突破し、今週月曜時点では、デジタル・アルバムとして33万枚以上の売上を記録している。つまり、公開からたったの3日間で、一つのDSPから825万人民元(約1億2千万円)近くの売上があったことになる。

 『Folklore』は中国ストリーミング・サービスのテンセント・ミュージックでも利用可能となっており、本作の世界的な売上において、中国が占める割合はかなり大きいと言えそうだ。また、NetEase Cloud MusicとRepublic Recordsの世界的な合計を比べるための「公開から24時間」の数字は無いものの、NetEase Cloud Musicが世界的な売上枚数130万枚のうち、少なくとも15%を占めていることは間違いないだろう。