中国のテンセント・ミュージック・エンタテインメントが、2019年第1四半期の決算を発表した。音楽ストリーミングの成長というより、これまで通りソーシャル・エンタテインメントアプリ(カラオケ・ライブ配信)に焦点を当てたビジネスによって、純利益は9億8,700万元(約157億4千万円)となり、総収益は前年同期比39.4%増となる57億4千万元(約915億8千万円)となった。
音楽ストリーミングはどのような数字となっているだろうか?テンセント・ミュージックが中国で運営する3つのオンライン音楽サービス(QQ Music=QQ 音楽、Kugou=酷狗、Kuwo=酷我)のモバイル月間アクティブ・ユーザー数は、昨年3月末時点での6億2,500万人から4.6%成長し、今年3月末時点で6億5,400万人となった。これらの音楽サービスを有料で利用する人の数は第1四半期末時点で27.4%成長の2,840万人となった。オンライン音楽部門の収益は、前年同期比28%増となる16億1千万元(約256億8千万円)となり、そのうちサブスクリプションからの収益は7億1千万元(約113億3千万円)となっている。
これらの数字から分かることは、テンセント・ミュージックのサービスの無料リスナー数は巨大ではあるものの、収益という観点ではまだまだ初期段階だということだ。テンセント・ミュージックが運営するオンライン音楽サービスにおける、有料会員1人あたりの月間平均収益は8.3元(約132円)となっており、テンセントのオンライン音楽部門の収益である16億1千万元(約256億8千万円)に対して、Spotifyは同時期に16億9,000万ドル(約1,853億8,500万円)の収益を上げている。もちろん、これら二つの企業はそれぞれ上場しているとはいえ、全く別のビジネス形態をとっており、全く別の市場でサービスを運営していることは念頭に置く必要がある。
テンセント・ミュージック・エンタテインメントのCEOである彭迦信氏は「弊社のユーザーはストリーミング・サービスを介して音楽コンテンツをますます消費するようになっており、我々はこの傾向を利用して、今後数年間で徐々に有料ストリーミング・モデルに移行する予定です」と述べている。これは、無料リスナーを大規模に増やすより、中国における有料サブスクリプション会員を促進したいというレーベルの要望を反映する言葉となっている。戦略の鍵としては、ストリーミング・サービスの有料という壁の内側に音楽を増やすことが含まれており、欧米とはまた違った動きとなっている。
テンセント・ミュージック・エンタテインメントのソーシャル・エンタテインメント・ビジネスにも目を向ける必要がある。ソーシャル・エンタテインメント部門のモバイル月間アクティブ・ユーザー数は、前年同期比0.4%増の2億2,500万人となっており、有料でカラオケ・アプリやライブ配信アプリなどのサービスを利用するユーザー数は前年同期比12.5%増の1,080万人となっている。
有料会員1人あたりの月間平均収益は125.7元(約2,005円)となっており、オンライン音楽部門の額の15倍以上だ。テンセント・ミュージックのソーシャル・エンタテインメント部門からの収益は41億3千万元(約659億円)となり、全体の収益の72%を占めている。