ミームを生み出す新たな重心となっているTikTokが、新たに新人アーティストをプラットフォーム上でブレイクさせる試みを始動する。
新しく導入された「Spotlight」というプロジェクトでは、デジタル上でTikTokのオーディションに参加することができ、成功したアーティストはパートナーとして参加している21のレーベルおよび出版社に紹介されるという。
「Spotlight」はまず、韓国と日本でスタートし、新人アーティストを世界的に活躍させる場を作っていくとのこと。今年の9月までに、審査員は応募された中から、TikTok上の実績も踏まえて、5~10組まで絞るという。
ビルボードによると、成功したアーティストには、「制作の機会とその他の賞」が与えられるとのこと。TikTokは、すでにユーザーがショートビデオに使用可能なオーディオサンプルのライブラリを提供しているが、「Spotlight」プログラムを通った音楽がマネタイズされるかについては明らかにされていない。
音楽を中心としたサービスを提供するアプリにとって、収益は重要課題であり、権利者が適切な報酬を要求することは想像に難くない。
世界三大メジャーレーベルと、TikTok運営会社のバイトダンス社間では現在、ライセンス契約が締結されており、この契約は間もなく契約が終了するという。ブルームバーグによると、メジャーがより多くの支払いを求める一方、バイトダンス側はこれを渋っており、交渉は行き詰まっているとのこと。
アプリのインストール数は10億回以上、その価値は750億ドルと見積もられており、TikTokはエンターテインメント分野で強い影響力を持つ存在かつ、音楽の巨大プロモーション・プラットフォームとなっている。そのため、情報によれば、メジャー・レーベルは「何億ドルもの保証金」と支払い料率アップを要求しているという。
バイトダンス社は、TikTokはストリーミング・サービスとは異なった音楽使用に基づいており、ストリーミング・サービスと同じように課されるべきではないと主張している。
ブルームバーグに対して、「TikTokはショートビデオのプラットフォームであり、レーベルの全カタログを必要とするような、音楽を消費するためのサービスではありません。」とバイトダンス社のグローバル音楽ビジネス開発部長のトッド・シェフリン氏は語っている。
「TikTok上のショートビデオは、アーティストにとってファンベースを成長させ、新作を知らしめるための貴重なプロモーション・ツールになり得ます」シェフリン氏は付け加えている。
今回の論点となっている「露出>収益」という主張は、これまで、YouTubeとのバリュー・ギャップ問題などでも上がってきており、メジャーを少なからず苛立たせていることだろう。ライセンス契約更新時期が近づくにつれ、コンテンツ所有者とプラットフォームの間で公な言論戦が起こり、交渉材料として使用されることは珍しくない。
今回の件で追及すべき点はたくさんある。「Spotlight」を通じてアーティストと契約を結ぶ動きは、TikTokが新たな才能をサポートすることを示すための単なるプロモーション策なのか?それとも、実は、メジャーが求めるよりも低い料率でアーティストと直接契約を結ぶための効果的なコンテンツ獲得方法なのか?
世界三大メジャーが管理する国際的大ヒットの数々をライセンスすることなく、TikTokが成長し続けることは可能なのだろうか?もしメジャーがコンテンツを引き上げることになったら、TikTokユーザーや、ユーザーがTikTokに消費する時間にはどれほどの影響が出るだろうか?
TikTokは強大な影響力を持っており、TikTokがここまで成長できた背景には音楽がある。確かにTikTokは、音楽プロモーションのプラットフォームにもなりうるが、ミームを生む側面の強いTikTokの世界では、何かが一夜にして拡散されても、アーティストのキャリアや楽曲の寿命はその後一気に落ちてしまうケースも多い。
音楽使用の収益化および支払いはTikTokにとって重要だが、同時に、楽曲やアーティストが一発屋のネタ扱いされないよう対応することも、今後の課題となってくるだろう。