アーティストの権利に関するブログ「The Trichordist」は毎年、主要な音楽ストリーミング・サービスのストリーミング再生ごとの支払いを比較した、「ストリーミング価格バイブル」を公開している。これまで通り、「現在年間15億回以上のストリーミング再生数を生み出しており、約350作品以上のアルバム・カタログを所有する中規模のインディーズ・レーベル」に基づいた、2019年の最新バージョンが公開された。
調査結果によると、Spotifyのストリーミングごとのレートは、数年間低下していたものの、現在では「安定」したという。調査にデータが使用されたレーベルは2019年、Spotifyのストリーミング再生あたり平均あたり0.00348ドルを得ていた(2018年は平均0.00331ドル)。ちなみに、これらの数値は、すべてのSpotifyストリーミング再生の平均であるため、プレミアム・プラン加入者の再生からはより多くの金額が支払われ、広告サポート型無料プランを使用しているリスナーの再生からはより少額が支払われているという事実には注意しておかねばならない。
「つまり、Spotifyは、100万回再生あたり、約3,300〜3,500ドル(約34〜37万円)を支払っているということです」とThe Trichordistは指摘している。なお、2019年のストリーミング再生あたりのレートである0.00348ドルは、同じレーベルによって記録された、2014年の0.00521ドルよりもかなり低い値となっている。昨年までは、ストリーミング再生ごとのレートは減少していたが、全体としての実際のロイヤリティは、Spotifyの成長に伴うストリーミング再生数自体の増加により、増えている。比較のために挙げると、調査対象となったレーベルのカタログの2016年における年間ストリーミング再生回数は1億1,500万回程度となっていた。
調査によると、Apple Musicのストリーミング再生ごとのレートは、Spotifyよりも大幅に高い、0.00675ドルだったという。「またしてもApple Musicがストリーミングごとの価値としては最高であり、ストリーミング全体におけるApple Musicの消費量が占める割合はわずか6%であるにも関わらず、全体の収益の約25%を占めています。Spotifyは、22%の消費量で、すべてのストリーミングにおける全体的な収益の44%を占めており、最も収益を生み出しています」とThe Trichordistは報告している。
ちなみに、調査対象となったレーベルの全体のストリーミング再生において、YouTube(具体的にはYouTubeコンテンツIDと一致したもの)が占める消費量は51%あるにも関わらず、全体の収益で占める割合は、ストリーミング再生ごとのレートが0.00022ドルであるために、6%に過ぎない。今回のサンプルにおいて、「YouTube」はストリーミング再生あたり0.00154ドルを生み出しており(これはコンテンツIDの一致ではなく、レーベル自身によるミュージック・ビデオのレートだろう)、「YouTube Red」は有料加入者からストリーミング再生ごとに0.01009ドルを生み出している。
The Trichordistでは、主要ストリーミング・サービス30社の完全な表を見ることが可能だ。これまでに、インディペンデント・アーティストのゾーイ・キーティング(Zoë Keating)もストリーミング再生ごとのレートなどの統計を発表しており、こういった別ソースと相互参照することで、有用なデータを得ることができるだろう。
もちろん、こういった発表は、ストリーミング時代におけるロイヤリティのすべてではなく、これらのストリーミング再生ごとのレートが、計算をでっち上げるために使用されるのは好ましいとは言えない。例えば、アーティストが受け取るロイヤリティは、レーベルとの契約によっても異なるだろう。とはいえ、The Trichordistや、ゾーイ・キーティングの数値が何を表し、何を表していないかを理解することができれば、進化する音楽業界の経済の全体像を掴む上で非常に有益だと言えるだろう。