YouTubeが新たな数字を公開した。CEOのスーザン・ウォシッキー氏は、YouTubeの最新四半期進捗状況に関するブログ投稿で、「YouTubeは、広告とサブスクリプションという収益のためのエンジンを二つ提供しており、昨年、広告とサブスクリプションから、音楽業界に30億ドル(約3,299億3千万円)以上を支払いました」と書いている。
一見、YouTubeが、2019年の売上高の約20%を音楽業界に支払ったように思えるかもしれないが、この30億ドルという数字には、広告とサブスクリプションの両方が含まれており、YouTubeが以前発表した151億1千万ドル(約1兆6,641億円)という数字は、広告にのみ関連しているということに注意しなければならない。YouTube MusicとYouTube Premium両方で有料登録者数の合計が2,000万人であること、また、音楽ライセンスの契約詳細は公表されていないことを考えると、これ以上の計算は、せいぜい推測程度となるだろう。
ただし、ビルボードによるYouTubeのプロフィールでは「YouTubeはこれまでに、世界中の音楽ビジネスに120億ドル(約1兆3,197億円)を支払ってきました」と主張されており、2019年のYouTubeの音楽業界への支払いは、YouTubeのこれまでの音楽支払い分の4分の1だったということは言える。ミュージック・ビジネス・ワールドワイドはすでに、これらの数字について、音楽業界二番手のデジタル・パートナーとして、YouTubeがApple Musicに近づきつつあるか、もしくは上回っている可能性すらあるとする分析を公開している。
これによって、長年議論されてきた「バリュー・ギャップ問題」は緩和されるだろうか。恐らくはされないだろう。YouTubeによる、「毎月、10億人以上の音楽ファンが音楽文化に触れ、新しい音楽を発見するためにYouTubeを訪れています」という2018年5月の発表、そして、2018年、YouTubeでミュージック・ビデオが2兆回弱再生され、YouTubeの総再生数の20%を占めたとする昨年6月の調査を覚えており、YouTubeはもっと支払うべきだ、セーフハーバーは抑制されるべきだ、と考えている権利保有者が多くいるからだ。
セーフハーバーおよび著作権に関するYouTubeのポリシーの一部または全てに反対しながらも、YouTube(特にYouTube Music)のチームによるハードワークに感謝して、アーティストのために活用することは可能だ。いずれにせよ、YouTubeが音楽著作権保有者にどれくらい支払っているか、また、ビジネス全体からどれくらいの収益を得ているかに関する透明性を高めることは必要だろう。